海外へ行って、スーパーマーケットで買い物をした経験のある人は多いのではないでしょうか。

『プロフェッショナルサービスマン』(プレジデント社刊)の著者、野地秩嘉さん自身も、海外出張のときには何度も利用しているそうです。南米は行ったことがないものの、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、アフリカとさまざまな国を訪れ、現地ではスーパーやコンビニで買い物をしたそうです。

その国にいる間は大して気にはならないそうですが、海外のスーパーで買い物をした後、レジ係から「Thank you」と言われたことはただの1度もないとのこと。「メルシー」も「ダンケシェン」も「謝謝」も「テレマカシー」も「コップンカー」も「アサンテ」(スワヒリ語)もないそうです。

日本以外の国では、庶民が利用するスーパーやコンビニのレジ係は客に対して、微笑を浮かべることはあっても、まず「ありがとう」とは言わない。たいていは無言で無愛想で、たまに「Next(さあ、次の人)」と突き放したように怒鳴る。

対して、日本の小売店、金融機関、公共交通機関、役所の窓口の対応は親切です。

「ありがとうございます」があふれかえっている。スーパーで398円の弁当を1個、買っただけでも、レジ係は姿勢を伸ばし、「ありがとうございます。またお越しください」と言ってくれる。そんな国はありません。

つまり、日本の接客サービスは諸外国に比べて突出していると言っていい、と野地さんは指摘します。だから、来日した海外の人たちは感激する。野地さんは1度、あるフランス人と開店直後の日本橋三越本店へ出かけていったことがあるそうですが、彼はフロアすべての店員がかしずくように頭を下げる姿を見て、素っ頓狂な声を出したといいます。

「おい、ほんとにここはデパートなのか。どうして、みんなオレたちに最敬礼するのか? 私たちは神なのだろうか?」

海外の人たちにとって、日本式サービスは信じられないほど優雅であり、かつ、心地よく受け止められているのです。

サービスといえばディズニーランドやリッツ・カールトンの本が有名ですが、それ以外の市井の人々の世界にも心を打つ名言があります。

この連載では、ロングセラー『サービスの達人たち』(新潮文庫)ほか、一貫してサービス業の取材を続けている野地さんの新刊から、プロフェッショナルサービスたちの名言をダイジェストにしてお届けします。