※本稿は、和田秀樹『どうせあの世にゃ持ってけないんだから 後悔せずに死にたいならお金を使い切れ!』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「もっとお金を使えばよかった」と死ぬ前に後悔する人たち
60代半ばから70代にもなると、定年退職や子どもの独立によってライフスタイルが大きく変わります。それまでに必要だった子どもの教育費が要らなくなったり住宅ローンの返済がようやく終わったりして、支出も大きく変化するはずです。
子育てにお金も手間もかかる間は、自分自身のことはいつも後回しにしてきたでしょう。しかし義務や義理から解放される老後は、自分のためにお金を使えるとっておきの季節です。もう老後のために無理して蓄える必要もありません。
ところが、老後になってもお金を貯め込んだりチマチマと節約したりする人が圧倒的に多い。
私はこれまで老人医療の現場で数千人の高齢者を見てきましたが、死期が近づくと「もっとお金を使えばよかった」「一生懸命に貯金して損をした」と後悔する人が少なくありません。
足腰が弱って歩けなくなったり、認知症がひどくなったり、寝たきりになったりすると、旅行に行きたくても行けず、好きな外食もできない。お金が山ほど残っていても、もう使えないのです。そのときの後悔の深さは計り知れません。
死を前にして、どんなに悔いても、もう遅いのです。
だからこそ、年を取ったら「お金は使うもの」と考え方を切り替えて、元気なうちにお金を使って自分の残りの人生をうんと楽しんだほうがいい。自分が稼いだお金です。誰に遠慮することもありません。
とはいえ野放図に使うわけにもいかないでしょうから、まずは、いまの生活費全般を見直して無駄な支出を減らすことから考えましょう。そして、年金などの収入から必要経費を差し引いて、残りはできるだけ自分を幸せにするものに使うことです。
つまり、死に金を生きたお金に変えるのです。

