さまざまな課題本の中でも『イノベーションのジレンマ』(クレイトン・クリステンセン著)、『なぜアップルの時価総額はソニーの8倍になったのか?』(長谷川正人著)、『会計力と戦略思考力』(大津広一著)。ほかに『小説 上杉鷹山』、『流れを経営する』、『小倉昌男経営学』もお勧めだという。

ある受講者は仕事が多忙をきわめたため、プレゼン用のレポートをまとめるのに当日朝までかかり、発表内容もよくはなかった。しかし、1年後のフォローアップ研修では真っ先に講師のところにやってきて、「今はこんなことにチャレンジをしていて、少しずつ成果が表れています」と目を輝かせたという。講師の話では、「研修を自分の気づきへと活かした受講者は3、4年後に会うと何かしら“暴れている”」という。

研修室をのぞくと初日とあって、講師が受講者に受講の心構えを話していた。「ここは道場だから、恥をかいてもいい。研修は厳しいが互いに裸になって頑張ろう」。まわりとの力量の差に恥をかいても、それを学びのバネにできる者が成長することができる。本間氏はいう。

「役員候補生が集められる経営塾で、最も重視されるのは人間力です。CIL1から始まる研修の体系は人間力を鍛えていくプロセスです」

恥を恐れず学べる者が人間力も磨くことができる。世の中では一般的には、社員に恥をかかせない“妙な”配慮が見られる。厳しさを追求するキヤノンの育成法が学びの基本を示しているとすれば、キヤノンの強さも納得がいくのである。

人材開発センター所長 本間道博
1958年、北海道出身。東京大学教育学部卒業後、キヤノン入社。長らく人事畑を歩み、キヤノンバージニア、キヤノンU.S.A.に出向経験もある。2010年から現職。
(的野弘路=撮影)
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