“頼りなさ”が助け合う社会をつくっていく
さらに、弱いロボットの不完全さは、人々の寛容性を引き出す要因にもなります。パナソニックが開発した「NICOBO(ニコボ)」というロボットは、家庭のなかで掃除をしたりすることはできません。
自分から話しかけたり、感情的な表現をすることで、ユーザーに癒しや共感をもたらしますが、ときにはその行動が予測不能であったり、うまくコミュニケーションが取れなかったり、そしてなんとオナラをすることもあります。
この頼りなさが逆に人間とのインタラクションを豊かにし、「支えてあげたい」という感情を引き出す効果を生むのです。
認知症の人が店員をしているレストランで注文を忘れられても、お客さんが怒らず飲食していることがメディアで注目を集めたことがあります。同じようにロボットが完璧でないことで、逆に人々が優しさや思いやりを持って接するようになるのです。
このような関係性は、ロボットと人間のあいだに新たな価値を生み出し、共在の重要性を再認識させてくれます。コミュニケーションにどこまでの機能的な性能を求めるのかは、使うシーンによって異なるのかもしれません。
しかし、弱いロボットが示すのは、必ずしもロボットが何でも完璧にこなすことだけが役割ではないということです。
本来、人が持っている「寛容さ」「共感」「利他」のような強さをロボットがうまく引き出すことで、人と人が助け合う社会につながっていくのかもしれません。
私たちがロボットと共に生きる未来に向けて、どのようにこれらの技術を活用していくのか、考える必要があります。弱いロボットがもたらす可能性を探求し、人間らしい社会の実現に向けて、一歩ずつ進んでいきたいと思います。