身寄りのない人が病院や施設で亡くなったとき、費用は誰が払うのか。遺体は誰が引き取るのか。「老後ひとり難民」の実態を専門家に聞いた──。
毛布を膝に掛けて座る高齢者
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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貯金1200万円があるのに生活保護を申請したワケ

都内在住82歳の男性Aさんは、2年前に妻を亡くした。妻は晩年、介護が必要な身体になっており、亡くなるまでの数年、介護保険サービスを受けながら自宅で過ごしていた。介護保険サービスの手が届かない、日常の細々したことはAさんが支えた。

当時、Aさんの妻を担当していたケアマネジャーはこう話す。

「二人暮らしだった頃のAさんは、とても元気で、慣れない料理や奥様のおむつ替えなどにも積極的にトライしていました。だけど、奥様が亡くなってからは、空気が抜けた風船のようになってしまわれて、今は要介護2の状態です。“あとはもう死ぬだけだから”が口癖で、家の中に閉じこもりがちになっています」

典型的な“老後おひとり様”の生活だ。このままの状態が続けば、社会との関係が薄れ、孤立、孤独のまま死を迎えることになるかもしれない。

ただ、Aさんの場合は介護保険サービスとつながっている分、恵まれている。『老後ひとり難民』(幻冬舎新書)の著者で、日本総研研究員の沢村香苗氏はこう言う。

「今後は全国的に高齢のおひとり様が増えてくると考えられます。最新の統計では世帯あたりの平均人数が、2050年には全国34都道府県で2人を下回るとされています。私の両親もそうですが、若い頃は、しがらみを避けるように都市部でのサラリーマン生活を選んだ人たちが、年を取ると逆に、地縁や血縁の薄い生活に困っています。子どもがいたとしても、そこに頼り切りでは、子ども側の負担も大きい。親の面倒を見たくてもそれができるケースばかりではありません。地域にしっかりとした地縁のある人以外はみなさんおひとり様候補なんですよね」(以下、沢村氏)

【図表】高齢者の単独世帯は今後増え続ける

昨今、「老後おひとり様問題」が、様々な場面で語られるようになった。高齢の一人暮らしであっても、社会とどこかでつながり、身の回りのことが問題なくこなせていればそれでいいのだが、そうした例ばかりではない。家族や地域との縁が切れ、孤立すればいつかは「老後ひとり難民」と化してしまう。

誰にとっても他人事ではないのだが、「実際おひとり様の何が問題なのか、イメージできている人は少ない」と沢村氏は言う。

「現場を取材していると、例えば急に体調を崩して救急車で運ばれても、“身元保証人”がいないために、どこの病院も受け入れてくれず、たらい回しにされた、などの話を聞きます。運良く受け入れてもらえたとしても、病院側は重大な手術の前には本人の意思確認を取ろうとします。本人に意識がなければ家族や保証人の話を聞く。こうした人がいなければ治療そのものが滞ってしまうかもしれません。また、介護施設に入ろうにも、やはり身元保証人となる人がいないためになかなか決められないなど、手続き的な支障が出てきます」

また、病院や施設で亡くなった後、医療費は誰が精算するのか、遺体の引き取りは誰がやってくれるのか、葬儀の段取り、そこにかかるお金はどう捻出するのか。そうした手続きも滞ってしまうことで、火葬できないまま、何カ月も経過してしまう例もあるようだ。