「長女も次女も、働くのは無理だと思います」
【父親】娘たちが家に住み続けられるのは、安心材料です。
【畠中】安心材料かもしれませんが、築年数を考えますと、今の家に娘さんたちの人生の終わりまで、今の家に住み続けられるかはわかりませんし、次女さんが障害年金を受給されているので、その分は生活保護費から差し引かれます。また、障害年金を受給されている次女さんの場合は、それほど厳しく言われないと思いますが、障害年金をもらっていない長女さんの場合、生活保護の受給はできても、65歳頃までは働くことを促されます。働くことを拒否し続けると、生活保護が途中で停止される可能性もあります。「一生、働かずに生活保護で生きる」というのも、実は簡単ではないんです。
【母親】長女も次女も、働くのは無理だと思います。
【畠中】無理だと思うなら、まずは親御さんが、生活保護制度についてきちんと調べることをお勧めします。たとえば全財産が10万円を切ったくらいでないと、生活保護の申請は難しいのですが、米田家の場合、次女さんの口座に障害年金がある程度貯まっていきますよね。その場合、長女さんの貯蓄はゼロだとしても、生活保護の申請はできないんですね。次女さんの口座のお金が底を尽きかねないと申請ができないわけですから、親亡き後は生活保護のお世話になるとしても、まずは親側が正しい知識を得ることが欠かせません。
生活保護を想定するなら、制度の詳細を知る努力が欠かせない
ここ数年、ひきこもり家族からの家計相談を受けていると、生活保護に頼らないと、親亡き後の生活が成り立たないだろうと思われるケースが増えていると肌で感じる。ところが、生活保護の正しい知識を得ようとしない人が多すぎる。親が亡くなった後、「いつか、親切な誰かが、申請を手伝ってくれるだろう」と楽観視する人も少なくない。
米田家の場合、仮に将来は生活保護のお世話になるとしても、現時点で生活コストの大幅な削減が必要である。長女の気分に配慮して、何も策を打たないままだと、10年くらいの時間はあっという間に過ぎてしまうからだ。
働けない子どもが生活保護に頼ることを「良いか悪いか」という二者択一で判断するのは難しい。ただ、明らかに「悪い」のは、子供がいずれかが「生活保護のお世話になるだろう」と考えているのに、親が生活保護の詳細を知ろうとしないことだ。
親の資産だけでは、子どもの生活が成り立たない家庭では、生活保護の正しい知識を身に付けることをお勧めする。それが子供への最後の置き土産でもなるのだから。