62歳の女性は65歳の夫、35歳の長男と暮らしている。長男は20代前半に発達障害の診断を受け、現在無職。年80万円の障害年金を受給しているが、再就職を目指している。ただ、状況によっては、払う年金保険料がムダになる可能性もあると知り、自分たち両親が他界後のわが子の将来を案じる女性はずっとモヤモヤしている。その理由とは――。
年配の女性が電話を受け、心配そうな表情
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現在無職の発達障害の35歳男性は親亡き後も暮らしていけるか

今回の相談者の長男は、「大人の発達障害」によって、仕事ができなくなり、無職の状態が続いていました。しかし、クリニックへの通院を続けたことで徐々に落ち着きを取り戻し、今は就職に向けた訓練を受けています。いずれは就職して、自立した生活が送れるようになるのではないかと、母親は期待を膨らませています。まだ就職活動を始めていないのですが、将来の資金状況を確認してほしいと相談に来られました。

相談者の家族構成
相談者:母親 斎藤 良子さん(仮名)62歳(主婦)
家族:父親 章さん(仮名)65歳(年金生活)
長男(35歳、無職)
次男(33歳、会社員)すでに結婚して独立

資産
・貯蓄額:4000万円(退職金を含む)
・自宅(マンション)

収入
・夫の老齢年金:年額272万円
・長男の障害年金:年額82万円

支出
・生活費:年額約250万円
・住居費、その他の支出:年額140万円

今回相談に来られたのは、専業主婦の母親(62歳)です。年金受給者の夫(65歳)と無職の長男(35歳)の3人暮らし。長男の将来について資金シミュレーションをしてほしいという依頼でした。聞けば、長男は20代前半で発達障害と診断され、障害年金を受給(年額82万円)しています。現在は就業を目指して、就労移行支援に取り組んでいます。

長男は、子供の頃から友達付き合いが苦手で、学校でトラブルを起こしてしまうこともあったそうです。ただ、登校拒否になることもなく、無事に大学まで進学しましたので、性格的なものと思っていたそうです。

ところが、大学を卒業後に就職してから、状況が一変しました。職場の人間関係がうまくいかず、問題社員のレッテルを貼られてしまいました。「場の雰囲気を読む」のが苦手で、たびたびトラブルを起こしてしまったようです。そのあげく、職場に居づらくなり、1年もたたずに仕事を辞めてしまいました。

その後、クリニックを受診すると、「発達障害」と診断されました。子供の頃からその要素はあったのかもしれませんが、社会に出て、周りとの協調性が重視されるようになると、うまくやっていけなくなってしまったようです。「大人の発達障害」と言われる状況だと思われます。