夫婦間でも不同意性交等罪は適用される
不同意性交が成立するのは配偶者に対しても同様です。
前出の内閣府調査によれば、既婚女性の10.6%が「夫から性的強要を受けたことがある」と回答しており、夫婦間の性犯罪は現在、社会的な問題となっています。
かつて、他人同士であれば性犯罪に該当するトラブルであっても、夫婦間で起きたものについては、警察は民事不介入のスタンスを取っていました。
ところが、現行の不同意性交等・わいせつ罪の条文には、法定刑の記述の直前に、ともに「婚姻関係の有無にかかわらず」という言葉がわざわざ加えられているのです。
つまり、夫婦間における性加害でも、他人と同様に罰せられるということを忘れてはなりません。
専業主婦が「拒めなかった」と主張したら…
今までのところ、妻に対する不同意性交等罪で逮捕された事例は、それほど多くはありません。
しかし、例えば専業主婦である女性が、「家を追い出されれば路頭に迷うことになると思い、夫によるセックスの要求を拒むことができなかった」と被害届を出したとすれば、場合によって夫は加害者として逮捕される可能性はゼロではありません。
なぜならその状況は、不同意性交等罪の構成要件である「同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態」の原因となる行為・状態として定められている「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」という類型に、当てはまるという解釈もできるからです。
さらに夫から妻への日常的なドメスティックバイオレンス(DV)やモラルハラスメントの事実が確認されれば、逮捕や起訴されて有罪になる確率は一層高まることになります。
また、民事における離婚調停や離婚裁判においても、妻が夫からの性被害を主張するケースが散見されます。あくまでも民事なので刑事罰に問われることはありませんが、その主張が認められれば、慰謝料の算定などにおいて、夫側は不利な立場に置かれることになるでしょう。