キスは減り、自慰は増えた高校生たち
「高校生のキスや性交の経験が大幅に減少した一方、自慰は過去最高水準となった」
――そんなニュースが波紋を呼んでいた。
2月14日はバレンタインデー。学校生活では盛り上がるイベントの一つだが、近頃は果たしてどうだろうか。
昨今、高校生の恋愛事情に変化が見られる。1974年から行われてきた「青少年の性行動全国調査」。2024年秋に発表された第9回の結果で、高校生のキスや性交などの経験率が前回に比べて大きく下がった。
キスは男子で11.1ポイント減の22.8%、女子で13.6ポイント減の27.5%。性交は18年前に比べて男子・女子ともに約半分にまで下がった。一方で、自慰は過去最高の数値となった。
Yahoo!ニュース「高校生男子のキスは過去最低、性交は18年前の約半分――変化の理由を学生たちが自己分析すると?」(2024年2月13日)より引用
いまの中高生は男女とも性的な行動に関してはきわめて自制的で、潔癖になっているといえる。その原因や背景について上掲の記事では「モテることがステータスではなくなってきている(むしろ部活や課外活動を熱心にやっているほうがステータスと見なされる)」という当事者からの意見が出されていた。この意見は私が実際に中高生から聞いた話とも完全に一致している。
「恋愛力が高い=イケてる」ではなくなった
いまどきの中高生はいわゆる「恋愛力」の高さが、必ずしも同世代内における「イケてる度」とは強く結びつかなくなってきている。むしろ逆に「恋愛のことばかり気にしている人はかえってダサいしキモい」といった人もいる。念のため言っておくがそれは「酸っぱいブドウ」ではない。かれらの価値基準において「恋愛力」のプライオリティが本当に下がってきているのである。
「イケてる度」の決定因子の変化のほかにも、近年の娯楽の多様化や社会全体の倫理化といった原因も挙げられるだろう。とくに男子にとっては恋愛や性交渉にコミットすることのリスク・リターンが、社会から提供されアクセス可能な他の娯楽コンテンツと比較したときに割に合わなくなってきているのもある。恋愛やセックスの倫理的コンフリクト、そして不同意性交やハラスメントの加害者になるリスク意識の高まりを彼らだって知らないわけではない。その問題については、これまでもプレジデントオンラインで論じてきた。
「女性を傷つけてはいけない」という社会倫理と「恋愛は女性に対してグイグイ侵襲的な態度が必要である」という恋愛テクニック――その二律背反を突きつけられた年頃の男子には、「そうまでして恋愛したくない」という意識が植えつけられる。