「コロナ禍」に中学生時代を過ごした

しかしながら、こうした背景分析は「若者の恋愛離れ」の全体的なトレンドを説明することはできるとしても、冒頭の記事で示されているようなここ数年に起こった「急降下」の原因については十分に芯をとらえきれていない。

そして思うに、おそらくその原因は「コロナ」にある。

より厳密にいえば、新型コロナウイルス感染症の拡大に端を発して、全社会的に開始された「新しい生活様式」や「外出自粛」のムードとともに多感な中学生の時分を過ごしたことが、かれらが高校生に差し掛かって、さながら遅効性の毒のように効いてきたということだ。

キスや性交などの異性経験が急落している現役の高校生たちは、中学時代にコロナ騒動(新しい生活様式や外出自粛)が重なった「コロナ直撃世代」ということになる。世の中はまだそこまで強い関心を向けていないようだが、かれらの中学時代の日々が「新しい生活様式」一色で抑圧的な形に染め上げられてしまったことは、かれらだけでなく社会全体にとっても大きな禍根を残していたことが後になって明らかになるだろう。

街中をマスク着用で歩く人々
写真=iStock.com/monzenmachi
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学校行事が「感染対策」の名目で失われた

覚えている人も多いだろうが、「コロナ直撃世代」であるかれらの“コロナ禍”とともにあった学校生活の日々は、あまりにも気の毒なものだった。部活動はもちろん各種学校行事も中止もしくは「リモート」で開催され、給食は当然のごとく席を離して沈黙しながらで、課外活動をしようにも外に遊びに行こうにもどこにも行く当てがない。そもそも学校も遠出を禁止していた――そういう状況で卒業まで過ごしてきた人びとである。

そしてなにより中学生という、心身ともに成長していよいよ他者(異性)を意識しはじめる微妙な年頃にさしかかったそのタイミングで、かれらは大人世代とくらべて十分に異性との交流経験を積むことができなかった。「学校外での(異性交流がともなう)イベントや遊び」はいつの時代でもいわゆる「恋愛強者」だけがもっぱらやっていたことだったから百歩譲ってまだしも、問題は学校内のイベントだ。異性とのコミュニケーションや接触が生まれる学内行事が「感染対策」の名目でもろとも失われてしまったことがなによりも大きな禍根を残した。

学内行事・学内イベントというのは、世の中の雰囲気や校則や倫理観に背いてでも外に繰り出して異性交遊できる少数の「恋愛強者」のためにあるのではない。概して奥手で引っ込み思案でムッツリスケベなそのまま行けばほぼ確実に「恋愛弱者」になってしまうこと請け合いのその他大勢のためにこそあった。かれら「恋愛弱者」予備軍に予行演習的に最低限の経験値を積ませるためにこそ重要な役割を果たしていたのだ。