「出世と金」では部下は動かない!

マネジャーに求められる能力は、以下の4つに集約されます。

まず第1は「経営視点」。これは、会社や世の中に対して何を成し遂げたいのか考える目線のこと。マネジャーと平社員の決定的違いはこの有無にあります。「宅急便」の生みの親である小倉昌男の『経営学』や松下幸之助の『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』など、経営者による指南書を読み、彼らがどんな信念を持ち、何を成し遂げようとしたか知ることは、大きな助けになるでしょう。

『小倉昌男 経営学』小倉昌男/日経BP社
「宅急便」の生みの親であるヤマト運輸元会長による、経営の教科書と言うべき一冊。全体を俯瞰する「鳥の目」を持つことの大切さを教えてくれる。

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』松下幸之助/PHP研究所
松下幸之助が松下政経塾の塾生に語った言葉を編集。「人を動かすには、“人情の機微”を知ることが大切という幸之助の人心掌握術を学ぶことができる」。

『これからのリーダーに知っておいてほしいこと』中村邦夫/PHP研究所
パナソニックの6代目社長は、異なる時代背景の中で、幸之助の教えをどう実践したか。「幸之助の『リーダーになる人に~』とセットで読むとよい」。

2つ目は「リーダーシップ」。先が見通せない時代、部下の問いに明確な答えを出せず、歯がゆさを感じることがあるかもしれません。実は今、リーダーシップそのものが転換点にきています。部下を教え導くリーダーではなく、彼ら自身が考え、答えを見出していく環境を整え、そのプロセスを支援することのできるリーダーが求められているのです。

社員が協働できる「場」をつくるのがリーダーの役割と説いた『場のマネジメント』は、その点で参考になるでしょう。資生堂の池田守男元社長とリーダーシップ論の第一人者である金井壽宏氏の共著『サーバントリーダーシップ入門』も、実践書として有効です。

『場のマネジメント』伊丹敬之/NTT出版
リーダーの役割は管理ではなく、部下が協働するための「場」を与えること。幸之助やホンダ創業者・藤沢武夫を達人として挙げ、そのノウハウを開陳する。

『サーバントリーダーシップ入門』池田守男、金井壽宏/かんき出版
資生堂で経営改革を実行した著者が、真のリーダーシップには部下に下から支えてもらうのではなく、自ら部下に仕える、逆転の発想が必要であると説く。