日常を違う視点で捉える力を養う

仕事をひととおり覚えた若手・中堅社員に必要なのは、言われた仕事プラスアルファの実績を残すこと。そのためにはいい企画を立てて周囲を説得しなければならない。いい企画は、発想の幅を広げることから始まる。それには、自分の専門外のジャンルの本を読むことだ。人と同じような情報をいくら集めても、似たような企画しか出てこないからだ。

例えば『シマウマの縞、蝶の模様』という生物の本。同書によれば、動物の体のデザインは実に多様だが、遺伝子レベルでは、ごく一部が違うにすぎない。これは「業績の悪い組織のメンバー全員を入れ替えずとも、影響力の大きい人物をたった1人替えるだけで組織はがらりと変わるかも」「AKB48がセンターの子を替えることで話題性を保つ効果に似ている」など、読み方次第でマネジメントやビジネスのヒントになる。

『シマウマの縞、蝶の模様』ショーン・B・キャロル/光文社
多様性に富む生物の体のデザイン。遺伝子レベルではその違いはわずかなものだった──。一部を替えただけで全体が変わるなど仕事の参考にもなる科学の本。

このような本は、検索して本を探すネット書店ではまず出合えない。本屋をぶらついて見つけるしかないのだ。東京・代々木上原の「幸福書房」のようなイケてる本屋になると「それが知りたかった!」というような本が次々に見つかる。思わず想定外の本を買ってしまうのが、いい本屋だ。

企画のヒントは何気ない日常の中にあることが多い。日常を見る目を鍛錬できる本としては『広告コピーってこう書くんだ!読本』がある。感想を言うときに使いがちな「なんかいいね」を封印し、なぜいいと思ったのかを分析するクセをつけることを提唱している。『フォークの歯はなぜ四本になったか』は、フォークやピンなどシンプルな道具のデザインが、どんな紆余曲折を経て今日の形に落ち着いたかがわかる。何気ないデザインの意味や機能を知ると日常の道具を見る目が変わってくる。

『広告コピーってこう書くんだ!読本』谷山雅計/宣伝会議
東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、日本テレビ「日テレ営業中」など数々の名コピーを生み出したコピーライターが“発想体質”をつくる31の方法を伝授。

『フォークの歯はなぜ四本になったか』ヘンリー・ペトロスキー/平凡社
ピンやファスナーなどの道具の歴史を辿ると、不具合や失敗を改善する形で今のデザインに進化したことがわかる。身近な道具を見る目が変わること請け合い。