“スキル”は部下に任せ、視点を広げよ

役員になるには、“突出”していなければいけない。皆が考えないことを考え、発言する。それが幹部候補の仕事である。

スキルは部下に任せればよい。上級管理職の役割は、部下が必死に考えているときに視点を転換させてあげること。ただし無から有は生まれない。視点転換のアイデアを得るには、普通の人が読むレベルに留まらない読書が必要だ。

まず、古典を読もう。グローバルな時代になればなるほど、文化に対する感受性や寛容性が重要になる。自国や相手国を理解し、その強み、弱みを知ることも大切だ。

日本を知るうえで、武士道の精神は押さえておきたい。『葉隠』は、その指南書として現在まで伝えられている本である。日本的精神のルーツはもちろん、具体的な処世術も書かれており、学びが多い。

『葉隠』和辻哲郎/岩波文庫
武士道の指南書。「『武士道は死ぬことと見つけたり』という言葉が有名だが、具体的な処世術も描かれており、現代の経営にも優れた教訓になる」。

欧米から始まった資本主義を理解するには、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』も必読だろう。現代経済の土台となっているのは、お金よりもむしろ人々の勤勉さである。社会学者のマックス・ヴェーバーは、その起源を宗教に求めた。

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
マックス・ヴェーバー/岩波文庫
営利を敵視するプロテスタントの倫理観が、実は資本主義の発展に貢献したことを説いた本。「土台になっているのは、仕事に対し勤勉に取り組む精神」。