最終的に数字を上げなければ、役員にはなれない。利益を出すための方法論については、京都の企業が先進的だ。京セラのアメーバ経営を解説した『稲盛和夫の経営塾』や、村田製作所のマトリックス経営をつくった泉谷裕氏の『「利益」が見えれば会社が見える』が参考になろう。

『稲盛和夫の経営塾』稲盛和夫/日経ビジネス人文庫
著者は「アメーバ経営」で知られる京セラ創業者。日本の強みを活かし、生産性を高めて利益率を伸ばし、高収益企業をつくるための方法論を語る。

『「利益」が見えれば会社が見える』泉谷裕/日本経済新聞社
村田製作所の強さの秘訣である徹底した原価管理、利益重視の経営手法「マトリックス経営」。それを確立した著者による本書は利益創出の参考になろう。

『武士道』新渡戸稲造/岩波文庫
「太平洋の懸け橋」たらんと志し国際連盟事務次長等を務めた著者が武士道を考察し、武士道がいかにして日本の精神的土壌に開花したかを説き明かす。

『論語と算盤』渋沢栄一/ちくま新書
日本の産業発展の礎を築いた著者の思想を伝える。「自立するための高潔な精神と合理的な判断力をあわせもつ『士魂商才』の教えは、現代にも通用する」。

『手仕事の日本』柳宗悦/岩波文庫
柳宗悦が日本各地に残る美しい手仕事を紹介。「日本のいいデザインは典型的な機能美。その特徴を言語化した本書はブランドを考えるうえでヒントになる」。

『徳川時代の宗教』R・N・ベラー/岩波文庫
西洋以外の国で唯一、日本が近代化に成功できた理由とは何か。著者である米国の社会学者は、日本に勤勉を尊ぶ宗教的土台があったからと指摘する。

『ドラッカーに先駆けた 江戸商人の思想』平田雅彦/日経BP社
パナソニックで松下幸之助のもとで働いた著者が、ビジネスの土台となる倫理思想の多くは江戸時代にすでに確立されていたとして、多様な思想を紹介。

『経営の精神』加護野忠男/生産性出版
企業の目的は、利潤の最大化ではない。著者は、バブル崩壊以降、日本企業が精神のバランスを欠いていると説く。営利や合理よりも大切なものとは何か。

『価値づくり経営の論理』延岡健太郎/日本経済新聞出版社
技術力、生産力は高く評価されているものの、利益の出ない体質になっている日本の製造業。再生のヒントは価値づくりにあるとして、生き残りの道を解説。

『中国化する日本』與那覇潤/文藝春秋
実は10世紀の宋の時代から中国は近代化していたと本書は論じる。「日本人の多くは中国より先に近代化したと思っている。中国との関係を知る良書」。

『トイレ掃除の経営学』大森信/白桃書房
日本の主要企業で実践されている5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)。本書は、なかでもトイレ掃除が勤勉精神の形成・伝承につながる理由を論じる。

『戦略本社のマネジメント』上野恭裕/白桃書房
できる限り現場に任せる「小さな本社論」が主流だが、本書は「大きな本社」を持つ企業のほうが業績がよい事実をデータと分析によって明らかにしている。

『アメーバ経営論』三矢裕/東洋経済新報社
本書はアメーバ経営を代表的手法とするミニ・プロフィットセンターの研究である。そのメカニズムや導入のプロセス、効果を明らかにしている。

甲南大学 特別客員教授
加護野忠男

1947年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科教授を経て、2011年より現職。『松下幸之助に学ぶ経営学』など著書多数。
(宮内 健=構成 浮田輝雄=撮影)
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