電子書籍よりもやはり紙の本
私たちもホールディング体制でやっているわけですが、コーポレートの技術力や商品の開発力、あるいは現在だけではなく将来にわたって研究していかなければならないネタなど、課題はたくさんあります。いまのところ私たちは、2016年を1つのターゲットとして動いていますが、もちろんそこで会社が終わるわけではありません。さらにその先の技術研究の目処をもっていないと、食品メーカーとしては立ち行きません。
目の前の事業だけではなく、将来の事業に広がりをもたらす要素に誰かが目をつけておくべきで、それをやりたいと思っています。そのためにもこの本は、「ちょっとおまえ、これを読んでおけよ」とサッと渡すことができる(笑)。前提を共有してから議論に発展させることができるんです。
昔、私が社長職に就く前は、「社長は1人しかいないんだから、周囲がいろいろな選択肢を提示してあげたほうがいいんだろう」と思っていました。右と左という選択肢を周囲があえて示すことで、社長の頭の中も広がるんじゃないかと。その意味でいえば、読書は頭の中の選択肢を増やすための1つの方法なんですよね。考えるための糧は、できるだけたくさんもっていたほうがいいわけで、実は社内でも「ブックチャレンジ制度」という形で、社員への読書推奨システムを導入しています。自由参加で、各人がテーマと目標冊数を決め、達成したら図書券をプレゼントする制度です。なかなか人間って難しくて、自分で経験しないとわからないことも多い。本を読んで得た知識と、実際に自分で体験したことの差を感じるのも大切なのではないでしょうか。
ちなみに私はもっぱら書店で本を購入しています。いまは書籍の刊行点数も多いので、何を読んでいいのかわからなくなるほど。その中で何を読もうかと考えたときに、やはり現物を見たほうが早いし刺激も受けやすい。こんなことを言うと時流に乗り遅れているかもしれませんが、電子書籍も駄目なんです。「いまどき、紙ベースですか?」と言われますが、やっぱり紙の本が好きなんですよね。
電子書籍の場所をとらない能力は素晴らしいですが、書店を巡りながら自分の目に触れたものを自分の手で選んでいく泥臭い作業が、やはり私には合っているんでしょうね。
上條 努氏が薦める必読本
『ハングリーであれ、愚かであれ。スティーブ・ジョブズ』
[著]竹内一正(朝日新聞出版)
――「私には決して真似できない」(上條氏)経営本、異端児の物語。
『日本人の誇り』[著]藤原正彦(文春新書)
――著者の日本史観がストレートに書かれており、日本人に誇りと自信を与える。
1954年、宮城県生まれ。76年慶應義塾大学法学部卒業後、サッポロビール入社。85年サンフランシスコ支店長。96年サッポロビール飲料(現サッポロ飲料)出向。2003年取締役兼常務執行役員。07年サッポロHD取締役、11年より現職。