未来を見つめるアフリカの子どもたち

双日会長 
加瀬 豊氏

企業活動は“グローバル”な時代です。われわれ商社がグローバルに活動するのはいまに始まった話ではありませんが、これからは他の多くの企業も海外に積極的に出ていく時代です。注目したいのは新興国で、日本経済や国際経済の分析について、東大の伊藤元重教授に絶大な信頼を置いています。伊藤教授は『経済危機は世界に何をもたらしたか』で、日本も積極的に新興国、とくにアジアの活力を取り込むべきだと説きますが、私も全く同感です。

弊社はアジアの先を見据えながら、他社に先駆けてアフリカ戦略を掲げています。アフリカを考えるにあたって私がまず手に取ったのが、独立運動を現地ルポした『人間の朝』(五味川純平著、河出書房新社、絶版)でした。国が貧困から自立・独立へとシフトするときのエネルギーは凄まじい。たとえば十数年前に中国に出張に行くと、天安門広場を自転車が雲霞のごとく通り過ぎていき、自分がのみ込まれてしまうかのような錯覚にとらわれました。ベトナムやインドネシアに行っても同じで、オートバイの波に圧倒されます。

『人間の朝』には、1960年代のアフリカ独立運動の熱気が描かれています。学生時代に読んだのですが、未来を見つめるアフリカの子どもたちの写真が目に焼きついていて、ようやく新興国の時代に入りかけたアフリカの原点を見直そうとしたものです。まさに新興国へと向かうアフリカの原点が、この本の中にあると思います。

では、新興国では、どのようにビジネスを展開すべきか。それを考える際のヒントにしてほしいのが米ミシガン大学ロス経営大学院プラハラード教授(故人)の『ネクスト・マーケット』です。世界には1日2ドル未満で生活をするBOP(ベース・オブ・ザ・ピラミッド)の人々が40億~50億人います。これら貧困層に属する人たちを、慈善事業や社会的責任活動で支援するのではなく、ビジネスの仕組みで解決していく。それがこの本のテーマです。