『マゼラン最初の世界一周航海』[著]ピガフェッタ[訳]長南 実(岩波文庫)/『なぜ技術経営はうまくいかないのか』[著]時吉康範(日本経済新聞出版社)

もう1つ、この本を読んで感じたのは、「世界に出る」とはどういうことかということです。世界地図を広げながらこの本を読むと、つくづく16世紀の昔に、よく海に乗りだしていったなと思うんです。「風で沈没しそうだ」と言いながらも、あの長い航海を成し遂げている。あるいは「こんなところに人なんているのか?」と思うようなところにもちゃんと人は住んでいる。人間って不思議な生き物ですよね。

この報告書の中では、ところどころ現地の言葉の辞書のようなものがつくられています。異文化同士が出合うときには、必ずどちらかがどちらかの言葉を勉強しているわけで、その最初の形がここには表れているんですよね。かつて日本にポルトガルの宣教師が来たときも、宣教師か日本人か、どちらかが互いを理解するために言語習得という努力をしていたわけです。

日本の企業もどんどん海外に出ていかなくてはならない時代がきていますけど、先人たちがどうやって未知の世界に飛び込んでいったかを知ることは、大切だと思うんです。当たり前のことですが、日本は島国で四方を海に囲まれています。結局いつかは外に出ていかなくてはならないんですよ。その中で、企業としての知的好奇心をどう世界に向けていくのか。そんな核となる刺激を与えてくれた本でした。

食品メーカーとして、技術を生かした経営とはどういうものなのか。それをいつも考えている中で手に取ったのが、『なぜ技術経営はうまくいかないのか』でした。

サッポログループに限りませんが、技術だけを取り出して経営していく形態はもう成り立たないと思うんです。技術の評価、あるいはその技術を運営する組織力、そういうさまざまな側面を統合していく力を企業として養っていかないと駄目で、その意味で、どのようにその問題をクリアしていけばいいのかを考えさせてくれた本です。