パ・リーグに完敗したセ界の盟主・巨人
また、「DH制に反対する理由」は、
5. ベーブ・ルースやスタン・ミュージアルは投手から野手にかわって成功したのだが、そのような例がなくなる。
というが、二刀流で圧倒的な活躍を見せる大谷翔平はパ・リーグの日本ハムファイターズ出身だ。
2019年の日本シリーズにおいて巨人はソフトバンクに4連敗した。その際に、巨人の原辰徳監督(当時)が「セ・リーグもDH制を導入すべき」という提案をしたが、他球団の賛同が得られず、議論は進まなかった。
2025年に入って、日本高野連は「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」において、「7回制」とともに「DH制の導入」を検討することとなった。
高校野球のリーグ戦「Liga Agresiva」では既にDH制を導入している。高校野球の指導者に話を聞いてもDH制への抵抗感はほとんどない。中学以下の野球ではDH制はもはや当たり前になっている。選手にも違和感はない。
ある指導者は「『DH制になると投手の打撃機会が減る』と言うが、使わなくてもいいのだから“エースで4番タイプ”の選手は、そのまま打席に立たせることはできる。何の支障もない」と語った。
東京六大学でも2018年以降、フレッシュリーグ(新人戦)などでDH制を導入している。
すでにタイムアップのときが来ている
2025年1月8日、NPBの榊原定征コミッショナーは「セ・パでルールが違うというのはノーマルな状態ではないと思う。見る立場からすると打撃活発な試合の方が面白い」とDH制導入に言及した。
DH制導入へ向けて、じりじりと「包囲網」が狭まっている印象がある。
前述の1月20日の「12球団監督会議」でも再度DH制の導入が提案された。その際、ヤクルトの高津臣吾監督は「神宮球場を本拠地としている監督としては、DHには反対です」と語った。というのも「外にブルペンがある神宮では、誰が代打とか、相手のブルペンを見ながら作戦を立てていくこともすごく面白い。DHがない方が神宮の楽しみ方はできるのかなと思う」と意向を示した。
建て替え計画が進んでいる神宮球場のローカルな特性に言及しての「DH反対論」は「小さすぎる」と言わざるを得ない。
また、セ・リーグ球団のオーナーからは「DH制になると一人レギュラーが増えるので年俸が上がる」との声も聞こえてくる。セ・リーグはこの半世紀「DH制を導入しないメリット」について特段のアピールをすることもなく、自分たちだけのルールとして存続してきた。
しかしながら、監督やオーナーは、日本野球50年、100年の大計を考えてDH制の是非について判断すべきだろう。すでにタイムアップのときが来ている。