メジャーのルールを変えた大谷翔平

2020年、ナ・リーグは試験的にDH制を導入した。この年は新型コロナ禍のために60試合のショートシーズンだった。DH制には慎重論が出て、翌2021年の導入は見送られたが、MLBと選手会との労使交渉を経て2022年、改めてナ・リーグでDH制が導入された。

2015年に就任したMLBのロブ・マンフレッドコミッショナーは申告敬遠や、データシステム「スタットキャスト」の導入など、新機軸を次々と打ち出してきた。ナ・リーグのDH導入も「ユニバーサルDH」として大きくアピールした。

2023年オフにFAになった大谷翔平は、打者としてはDH専任だ。DH制がないリーグへの移籍は事実上不可能となる。一説には、これを懸念したナ・リーグ球団のオーナーがDH制導入に同意したといわれている。事実、大谷はナ・リーグのロサンゼルス・ドジャースに移籍した。

米大リーグ、オールスター戦にナ・リーグの2番・指名打者で出場し、3回に球宴で初本塁打となる先制3ランを放つドジャース・大谷翔平=2024年7月16日、アーリントン
写真=共同通信社
米大リーグ、オールスター戦にナ・リーグの2番・指名打者で出場し、3回に球宴で初本塁打となる先制3ランを放つドジャース・大谷翔平=2024年7月16日、アーリントン

2019年の時点では、世界の主要なプロアマの野球団体でDH制を導入していないのは、日本のNPBセ・リーグ、東京六大学連盟、関西大学野球連盟、日本の高校野球だけになった。

「多勢に無勢」という言葉があるが、世界の野球界から見れば、セ・リーグ、日本の高校野球、大学野球はそういう状況になりつつある。

ついに「申告三振」が提案された

セ・リーグが「DH制に反対する理由」を発表して今年で半世紀になる。

その中に

3. 投手も攻撃に参加するという考え方をなくしてしまう。

という項目があるが、セ・リーグ投手の打撃は、以後、まったく進化していない。

【図表1】NPB投手の打撃成績
筆者作成

1975年と2024年のセ・リーグ全投手の打撃成績を比較すると、安打、本塁打は激減し、三振が大幅に増えている。試合でやる気なく三振してベンチに戻る投手の姿は、セ・リーグの試合ではもはや当たり前の風景である。

今は交流戦があるので、パ・リーグの各球団は143試合のうち、セ・リーグが主催する交流戦の9試合だけ投手が打席に立つ。2024年のパ・リーグ投手の打撃成績は、118打数8安打0本塁打2打点68三振、打率.068だった。

2025年1月20日の「12球団監督会議」で、ソフトバンクの小久保裕紀監督が「申告三振」を提案し、日本ハムの新庄剛志監督も同意したとされる。今のプロ野球で投手が打席に立つナンセンスさを揶揄したのだろう。