航空管制官は、航空機の安全な飛行を支える重要な仕事だ。しかし、近年は現場の人手不足が大きな課題となっているという。一体なぜなのか。元航空管制官のタワーマンさんの著書『航空管制 過密空港は警告する』(KAWADE夢新書)より、一部を紹介する――。
欠員の状態で「過密空港」を動かしている
羽田事故の直後から、事故の遠因の1つといわれているのが管制官の人手不足です。
まず、全国に管制官は何人いるのか、というところから説明していきましょう。国土交通省(国交省)によると、2023(令和5)年度の管制官の定員は2031人。この数はここ数年、1900〜2100人のあいだで推移しており、大きくは変わっていません。
しかし、近年は中途退職や育児休業などが増加し、2024(令和6)年6月時点で113人の欠員が出ているとのことです。つまり、現在は2000人を下回る状態で運用しているということになります。
その一方で、発着する飛行機の便数は増えています。たとえば、羽田空港の年間の発着枠は約49万回。混雑時には4本の滑走路を駆使して航空機が40秒に一度発着しており、世界でも有数の「忙しい空港」として知られています。2010(平成22)年度は約30万回だったので、15年前比で1.6倍の増加です。
「人数を増やせば解決」とはならない
便数が増えれば、単位時間内に発着する飛行機も当然増えるので、単純にいえば、より過密になるということです。過密になれば、管制の難易度は増します。1人の管制官が同時に抱える飛行機の数は増え、情報処理しなければならない絶対量も増え、予測の難易度が高まると同時に、不確実性も高まります。
では、人数を増やすことが解決につながるのか、というと、それも一筋縄ではいかないといわざるを得ません。人数を増やしたとしても、管制席の数は後で検証するように適正な作業の分担にもとづいて区分されたものだからです。
ましてや、1本の滑走路を2人で処理することなどあり得ません。意思確認の手間が増え、よほど危険なことになります。1人の管制官が1つの滑走路の離着陸を捌かなければならない、という現状は変えようがありません。

