2025年の日本の景気の行方はどうなるか。景気指標を丁寧に読み解きながら予測してみたいと思います。
1月20日に発足する、「アメリカ・ファースト」のトランプ政権の動向は私たち日本人の生活に直結します。グリーンランドやメキシコ湾を巡る彼の言動をみると、今後も過激な発言をする可能性は大。とりわけ関税をはじめとする政策は日本経済を直撃します。就任後、どのような政策をどういう優先順位で行ってくるか、注意が必要です。
トランプ案件とともに今後の景気を左右するのが国内経済です。まず、賃上げがどの程度行われるか。賃上げ率がインフレ率を大きく超えられるかが焦点です。
近頃、賃上げのニュースがよく出てきます。大企業では昨年に続き5%を超える賃上げを表明しているところも少なくありません。
たとえば、すかいらーくホールディングスで6.4%、住友化学は5.5%程度、アサヒグループホールディングスは6%を目指すと表明しました。イオンではパート従業員の時給を7%上げるとしています。ただ、日本の全企業数の約99%は中小企業であり、働く人の約7割は中小企業に属するので、結局は中小の賃上げがどの程度になるかがカギを握っています。
賃上げはインフレに追いつくか
景気の最重要項目である、賃上げとインフレ率について細かく見ていきましょう。
ひとりあたりの給与を表す「現金給与総額」によれば、2024年初は前年比1%台の伸びにとどまりましたが、賞与の影響もあり、6月は4.5%、7月は3.4%と比較的大きく伸びました。その後は、2%台半ばから後半の伸びが続いています。
これに対し、インフレ率(生鮮除く総合)はどうか。年初は現金給与総額の伸びを上回っていましたが(=インフレを加味した「実質賃金」はマイナス)、賞与期には、現金給与総額よりもインフレの伸びが低く、最近では、ほぼ同じくらいの上昇率を示しています。(厳密には、現金給与総額と比べる場合には、「生鮮除く総合」と違うインフレ率を使うこともありますが、図表1では実感として分かりやすい「生鮮除く総合」と比べた)。
つまり、夏には、インフレ率を加味した「実質賃金」は一旦プラスに転じていましたが、最近では現金給与総額の伸びとインフレ率がほぼ同じで、実質賃金は11月までの4カ月はマイナスといった状況です。
2025年のインフレに関しては、2%台での動きが続くと予想しています。食品などの値上げが続く中、運送などのサービス価格も人手不足の影響もあり前年比2%台後半で推移しそうです。日本経済新聞が主要企業100社の社長に行ったアンケートでも90.8%の企業が検討中も含めて値上げをする意向です(1月9日付朝刊)。今年は消費者物価が大きく下げることはなかなか考えにくい状態です。