メンタル疾患の入り口に…

⑤ 扁桃体が肥大する

ネガティブな感情や体験が多い人は、そうでない人と比べて扁桃体が肥大している、という研究があります。

これは、私は非常に恐ろしいデータだと思いました。

扁桃体は脳の警報装置です。生き延びるために、身に危険を及ぼすものを察知する役割があります。

この扁桃体、「バカヤロー!」「死ね!」といった言葉を聞くだけでなく、自分で話しても興奮するのです。扁桃体は、毎日訓練されるので、肥大します。結果として、「小さな不安」にも反応するようになり、常に「不安」や「恐怖」を引き起こします。いつも心配なことが頭から離れなくなるのです。

他人の悪いところがさらに目について、悪口が言いたくなる。他人の些細な言動にイラッとしたり、怒りが湧いてくる。感情もコントロールできず、不安定になります。こうなると、ほぼメンタル疾患の入り口です。

脳の3Dイラスト
写真=iStock.com/nopparit
※写真はイメージです

悪口を相殺するには

⑥ 悪口が感謝の効果を相殺する

ノースカロライナ大学のフレドリクソン教授は、ポジティブ感情とネガティブ感情の比率は3対1が理想的であると言います。この比率を維持することで自己成長につながり、幸福感が高まると考えられています。

別な研究では、離婚しないカップルのポジティブ・ネガティブ比は、5対1以上。業績の良い企業、チームでのポジティブ・ネガティブ比は、6対1以上と言われます。ポジティブ・ネガティブ比の考え方は、幸福心理学の中でも非常に重要な理論となっています。

「ネガティブ言葉」を1回言うと、「ポジティブ言葉」を3回言って、ようやくバランスがとれるのです。つまり、「悪口」を1回言うと、「ありがとう」を3回言わないといけない。悪口が感謝の効果を相殺するのです。

樺沢紫苑・田代政貴『感謝脳』(飛鳥新社)
樺沢紫苑・田代政貴『感謝脳』(飛鳥新社)

バランスをとるだけでなく、感謝の効果を十分に出すためには、「悪口」1回に対して、「ありがとう」を5回言う必要がある。「悪口」を1日10回言う人は、「ありがとう」を50回以上言わないといけない。どうみても無理です。

ですから、他人への悪口、誹謗、中傷、あるいは「自分はダメだ」「自分には無理」といったネガティブな言葉は、極力、言うべきではないのです。

本書『感謝脳』を読んで実践しても、「効果が出ません」という人は必ずいると思います。そういう人は、悪口やネガティブ言葉をたくさん言っているはずです。悪口が多い人には、感謝の効果は出ないのです。

悪口を言うと寿命が縮まる。「ありがとう」と言うと寿命が伸びる。あなたは、どちらの言葉を発したいですか?

【関連記事】
【第1回】タダで成績が上がり、うつ症状が改善し、幸福度が爆上がりする…世界の研究が証明した「感謝」の驚きの効用
老齢医療の現場で医師は見た…「元気なうちにやっておけばよかった」と多くの人が死に際に思う"後悔の内容"
「今日も不愉快でいてくれて、ありがとう」…こいつだけは許せないと思う相手に感謝できるソクラテスの言葉
好きな人にも仲のいい友人にも疲れてしまう…そんな"気難しい性格の人"を優しく包み込む精神科医の言葉
いつも幸せな人は「2時間の使い方」の天才である…あなたの人生をバラ色に変えるたったひとつのコツ