孤独を恐れて結婚相手を探したり、友人づくりに励んだりする人がいる。孤独は悪いことなのか。32歳のときに視力を失い、「全盲の医師」として働く精神科医の福場将太さんは「孤独は、自分と向き合うためにも必要なもの。ただし、『一人でも寂しくない』という人であっても孤独100パーセントは絶対にダメ」という――。

※本稿は、福場将太『目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

「孤独」は悪いことではないけれど…

拙著『目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと』(サンマーク出版)では「せねば」と「したい」はバランスが大切、というお話をしました。

心の健康において、もう2つ、バランスが大切なことがあります。

1つは「忙しさ」と「暇」。そしてもう1つが「孤独」と「ふれあい」です。

あなたの生活の中で、孤独とふれあいは何パーセントと何パーセントのバランスになっているでしょうか?

実は、特におすすめのバランスはありません。というのも、人によって最適のバランスは異なるからです。誰かと一緒にいるのが大好きな人は、ふれあいが95パーセント、孤独が5パーセントでも良いでしょう。

逆に誰かと接すると極端に疲れてしまうという人は、孤独が80パーセント、ふれあいが20パーセントでも良いでしょう。一般的には悪いこととして扱われがちな「孤独」ですが、1人で過ごすのも人生の素敵な時間、必要な時間だと私は思っています。ただ1つだけお伝えしたいのは、孤独100パーセント、ふれあい0パーセントだけは絶対ダメということです。

スマホを見て、悲しんでいる女性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

「一人でも寂しくない」そんな人が見落としている視点

どうして孤独100パーセントだといけないのでしょうか?

1つは、多くの人間はやはり寂しさに耐えられないということ。

誰とも接さず、誰とも言葉を交わさない日々は、うつ病や依存症、ひいてはその先にある自殺に発展するリスクがとても高いです。そしてもう1つの理由は、いざという時にSOSできる繋がりは必要ということです。どこにも助けを求められない、自分が倒れていても誰も気づいてくれない生活では、やはり病気や事故のリスクが高まるのです。

それなら一切寂しくなく、落ち込みもなく、お酒やギャンブルにも依存せず、自分で自分の安全を守れている人なら孤独100パーセントでも良いのかというと、やっぱりそれでもダメなのです。

それに気づいたのは2020年から日本でも猛威を振るった新型コロナウイルスの社会情勢です。

多くの死者数に「このまま人類は滅ぶんじゃないか」、仕事もなくなって「この先どうやって暮らしていけばいいんだ」、そんな不安が多くの人の心に込み上げました。また、度重なるイベント中止に「どうせ一生懸命準備したってまた無駄になるんだろ」、仕事の自粛に「俺の仕事は不要ってことだな」、そんな投げやりな気持ちも多くの人の心に生まれました。

しかしコロナ情勢がもたらした、最も深刻な心への影響はもっと他にあります。それが何だかお分かりですか?