「PAC思考」を使うと間違いは生じない

前提と条件の関係が適切であるか把握するには、ロジックの構造を図解することが早道です。

私がビジネスパーソンや学生に教えているクリティカルシンキングのフレームワークの基礎として「PAC思考」(Premise-Assumption-Conclusion)というものがあります。これを使うと、先ほどの買い物の間違いは、そもそも発生しなかったでしょう。

ソファに座ってイライラした不幸な若いカップル
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PAC思考は、意思決定とその根拠を3つの要素、Premise(前提)、Assumption(仮定)、Conclusion(結論)で構造化します。PACとは、各要素の頭文字を取ったものです。

①前提:ある決定や判断の基礎となる事実や一般的な認識
②仮定:前提に基づいて立てられる、特定の状況や将来に対する予測や推測
③結論:前提と仮定を基に導き出される最終的な判断や決定

たとえば、出かける時に曇っていて、あなたは「雨が降りそう」と考え、傘を持って行くことにしたとします。

前提は「空が曇っている」です。すでに事実として確認できることが該当します。仮定は「雨が降りそう」という不確定な要素。雨は降るかもしれませんし、降らないかもしれません。結論は「傘を持って行くことにした」です。前提に仮定を照らし合わせて、この結論を出しました。

前提と仮定から合理性のある結論を導く

このように、前提と仮定から合理性のある結論を導くのがPAC思考の構造です。先ほどの買い物の例で登場したのは前提と条件でしたが、このうち「条件」はPAC思考における「仮定」にあたります。

妻の指定する「前提」と「仮定」は十分ではありませんから、不足している次の点を加えることにします。

(前提への追加)買い物の背景として、料理で卵を使いたいと考えている。
(仮定への追加)卵がなければ買わなくてもよいが、あるなら10個ほしい。

こうして前提と仮定の不明瞭だった部分をはっきりさせれば、夫は正しい結論を導き出すことができるでしょう。

前提:料理に使うため、牛乳1個が必要であり、もし卵もあれば買いたい。
仮定:店に卵があれば、卵を10個、買ってほしい。
結論:店で卵を見かけたら、牛乳1個に加えて、卵を10個買う。

何かを判断する時、PAC思考でその前提と仮定を意識することで、思い違いや考慮不足による失敗を防ぐことができます。前提と仮定を明確にし、それをしっかり検証することで、結論の妥当性を高めることができるのです。