ゴルフ人生で一番手が震えた、その瞬間

しかし、16番で7mはありそうなバーディーパットを沈めて、17番では難しいアプローチから、しびれるパーを決めた。18番では持ち前のショットの正確性を活かし、バーディーチャンスにつけ、それは外れたものの1m弱のパーパットを残した。

やや下りで、ほんの少し傾斜によって曲がるか曲がらないか微妙なパッティングラインだった。

難コースとして知られる大洗GCの最終18番ホール
筆者撮影
難コースとして知られる大洗GCの最終18番ホール

結果的にこのパットが入るか入らないかが、合格の分水嶺だった。コース途中にはリーダーボードもあり、本人も通過ラインギリギリであり、入れば合格、外せば不合格とわかっていたという。

「ゴルフ人生で一番手が震えて、一番怖かったパットでした」

最終プロテスト期間中は、天才肌の平塚も「イップスってこんなかんじなのかな」と感じるほど、思うように手が動かなくなっていたという。過度に緊張しながらも、一度仕切り直して、このシビれるパットを真ん中から沈めた。

2次予選、そして最終プロテストと文字通り土壇場まで追い込まれてから、見事にその力を発揮した。ゴルフに死に物狂いになれず、どこか逡巡しているようにも見えた平塚が、こんなにもメンタル面の強さを見せたことに大きな驚きがあった。

これはきっと、彼女の“信仰”と無関係ではあるまい。

自分の信じたものを心の支えにして、自分のスタイルを貫き通して勝ち取った、見事な合格だった。

平塚 新夢(ひらつか・あむ)
2000年生まれ。高校在学中の2017年、ステップ・アップ・ツアー「静ヒルズレディース 森ビルカップ」で史上5人目となるアマチュア優勝を果たす。
国の指定難病、成人スチル病との闘病生活を経て、現在の経過は良好。
JLPGAプロテストは7度目の挑戦となる2024年に合格。新たなステージでの活躍が期待されるプレーヤー。宮城県出身。
【関連記事】
【第1回】プロテスト不合格は11回…女子ゴルファー笹原優美がそれでも「私はゴルフのプロ」と断言する理由
大谷翔平すらできなかった「偉業」を成し遂げるか…45本塁打、最速153キロ高校生が「12球団入り」を拒否した理由
なぜ佐々木朗希は今メジャーに挑戦するのか…長年の取材で見えた彼の野球人生に決定的に欠けていること
「運動嫌いの子供」が増えるだけ…オリンピック選手を"体育教師"として学校に送り込む文科省の大失策
「何のために生きているかわからない」天涯孤独の40代相談者にカウンセラーが勧めた「意外な日課」