ゴルフの神様に愛された才能
好きなことを我慢して、生活の全てをそれに懸けるほど、ゴルフは好きではない、と平塚は言う。
ところが、ゴルフの神様はそんな平塚をむしろ愛しているように思える。
平塚は、学生時代の指導者が「こんな子は見たことがない」と評するほど、天才肌のプレーヤーだった。ボールにコンタクトする感覚に優れていて、特にアイアンショットの打音は、女子選手とは思えないような澄んだ音がする。このソリッドなインパクト音を聞くと、やはり特別な才能を感じてしまう。
難病に侵され、体重が爆増したときも、回復後に体重がまた減ったときも、その天才的な感覚は変わらなかった。女子アスリートが10kgを超える体重の増減があれば、競技パフォーマンスに大きな影響があって当然だ。
しかし、闘病や著しい体重の増減を経ても、ラウンド数や練習量が減っても増えても、平塚のゴルフの才能は依然としてきらめきを失わずに宿っていた。
「ゴルフの課題は?」と聞いたら驚きの返答が
何年に一度という天才たちが集うプロゴルフの世界で、平塚の天才ぶりをことさらに強調するつもりはないが、やはり何か独特の感覚を持った選手だということはたしかなようだ。と同時に、すでにスタイルが完成している選手だとも言える。
成績を上げるためには、パフォーマンスを向上しなければならない。そのためにどんな課題に取り組んでるかを聞いてみたが、驚いたことに、あまり具体的なものが出てこなかった。
「課題ですか? いや、あるはずだけど、なんだろう。
飛距離は、あったらあったで良いですけど。別に今のままでも困ってないし。パッティングを怖がらずに打ち切るとか、ですかね」
特別なことをしなくても、自分がしたいようにプレーが出来れば、良いパフォーマンスが出せる。知識を増やし、後天的な取り組みによって、競技成績を上げる選手も増えているなか、平塚は自分が授かっている先天的な感覚をとても大事にしている。
コーチをつけない理由も、自分の感覚と違うことを行うのを嫌うからだろう。