一般選抜による進学者の中には直前の模擬試験の結果から第一志望の大学から東北大学に受験校を変更した学生もいる。すべてが第一志望で入学したAO入試組と比べると入学時点での「東北大学で学びたい!」という思いの強さに差があって当然である。
だが一方で、早々と合格が決まるAO入試では4月までの間、遊び呆けるのではないかと思うが、そうはさせない仕組みを用意している。
11月末に合格が決まるAOII期の合格者は翌1月から入学前教育として英語学習を全学部で義務付けている。それに加えて工学部では数学と物理学の演習をさせる。その演習内容は入学後に1年生が勉強する内容で、入学直後に試験をし、一定の点数を取ればそこで単位が取得できる仕組みだ。
またAO入試の合格者には3月に2週間ほど海外の協定校で英語を学ぶ海外研修プログラムも用意されている。
面接が“合否”を左右する
AO入試の合格者への東北大学のサポート態勢は、何十年も前に大学受験をした筆者にとっては驚くことばかりだ。AO入試の合否を左右するのは面接の出来不出来が大きい。例えば、AO入試III期の1次選考突破者は大学入試共通テストで一定以上の成績を収めた者で、成績分布は団子状態だという。そのため「面接の成績の差が合否を決めることが多い」(滝澤副学長)。それだけ面接の実施には、受験生が十分、力を発揮できるようにきめ細かな配慮が施されている。
工学部では同じ時間にそれぞれ1人の受験生に3人の教授らが10会場で面接すると、面接前の30分で10人の受験生の緊張をほぐす教員がいる。「面接官は3人です。まずはこんなことを聞くから思いの丈を伝えればいいんだよ。緊張しなくてもいいからね。はい、深呼吸をしようか!」などと受験生の「ほぐし役」を配置している。
面接後もフォローアップがある。面接を終えた受験生にコーヒーやお茶、お菓子を用意し、「どうだった? うまく話せたかな」「それなら良かったね」などと会話して、アフターケアをするという。
「結果的に不合格となったとしても気持ちよく帰ってもらって、再び一般選抜に挑戦しようと思ってもらいたいからです」と滝澤副学長は語る。「東北大学に入りたい」と思いを強めてもらい、入学に繋げていくという狙いがあるのだ。
「選抜試験をすべてAOへ移行」の意図
AO入試に力を入れる東北大学は11月8日に第一号の国際卓越研究大学に認定された。国際卓越研究大学は政府が創設した10兆円規模の大学ファンドから毎年100億円ほどの資金を受け、世界最高水準の研究成果を生み出していく。
そのためには優秀な学生や教員を集めなくてはならない。国際卓越研究大学の認定申請をした際に東北大学は「選抜試験を全て総合型選抜(AO入試)へ移行する」と表明した。実施の時期は明示していないが助成期間(最長25年)の間には実現しなければならない。