法人評価の判定結果には大学間でバラつきがある
大学にとって現状診断としてもっとも包括的なのは、活動全体を検証する法人評価のはずである(共通指標では、診断は指標化された11の事項のみにかぎられる)。さて、これは周知の事実なのだが、法人評価の判定結果は大学間でかなりのバラつきがある。「よそと同じような取り組みなのに、うちに対しては評価が低かった」という不満はあちこちから耳にする。聞くところでは、ある大学が、どんな取り組みをすれば高評価になるのかと、他大学の判定結果を多数集めて比較検討を試みたことがあった。しかし、努力は無駄であった。どこにも一貫した判定基準を見出せなかったのである。
さらに、低評価を受けた大学がその理由を知りたいと思っても、手立てがない。評価判定の内容的な基準はどの文書にも記されていないし、評価結果書にも個々の判定の根拠までは詳しく書いていないからである。
もっとも、これには余儀ない面はある。高度に専門分化した教育・研究を対象とするだけに、審査の内容的な基準を示すのは無理である。また、法人評価は大規模事業なので、判定根拠を逐一記すのはむずかしい。だがそうではあっても、大学にしてみれば、何が原因で評価が低かったのかが不明だということには変わりはない。
何が欠点で今後どう動けばよいのかが伝わらない現状
さらに、判定結果からどのようにして予算面の報奨が算出されるのかもはっきりしない。報奨は運営費交付金中の「法人運営活性化支援」によるが、この額の算定に際しては、各大学の中期目標・中期計画の達成度をポイント制で査定するとのことである。だが、中期目標・中期計画は大学ごとに異なっていて、(本書の)先の例でいえば「逆上がり」と「縦笛」である。そこに共通の尺度を設定するのは容易ではあるまい。しかも、詳細は公開されておらず、不明である。つまり大学にしてみれば、次期に予算を増やすべく努力したいと思っても、何をどうすればよいかはわからない。
以上を要するに、現行の制度では大学側に、何が欠点で今後どう動けばよいかを伝えず、ただ結果の数字だけで尻を叩くという形になっている。これでは建設的な政策とはいえまい。ついでながら、メリハリのつけ方もいささか性急である。共通指標などは、マイナーながら毎年のように制度の手直しがある。業績を刺激するにせよ、大学の行動を誘導するにせよ、成果連動配分の効果が現れるには数年を要する。それを待たずに毎年制度に手をつけるのは、それこそエビデンスの軽視ではなかろうか。