※本稿は、和田秀樹『逃げ上手は生き方上手』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
「逃げてはいけない」はウソである
「自分が会社に行かないと仕事が回らない」と思い込んでいる人がいます。
そんな人に休むことをすすめても当然、拒否します。
本人は責任感もあって、「逃げてはいけない」と思い込んでいるのでしょうが、そもそも会社という組織に「自分がいないと回らない」仕事なんてありません。常に代わりの誰かがいる。でなければ経営は成り立たないでしょう。
それなのに、自分が行かなくては仕事が回らないと勝手に考え、「逃げてはいけない」と、休まず働いて心身を壊してしまったら……。
損するのは自分だけだと思いませんか。
「つらい」と思ったら、会社を休むなりして、さっさと逃げ出せばいいのです。
今いる場所から、一時的にせよなかなか逃げ出せないというのは、多くの人に共通しているようです。「逃げるのはよくないこと」という思い込みがあるのでしょう。
いじめられて自殺する子が後を絶ちませんが、私に言わせれば、いじめられているのにどうして学校に行くのだろうと思ってしまいます。
たしかに、いじめるほうが悪いのは言うまでもありません。しかし、だからといって、逃げずに正面から向き合うというのはいかがなものでしょう。逃げればいい場面で逃げないで、最終的に自殺するなんて、あまりにも悲しすぎます。
その意味でも、「逃げるのはよくないこと」「逃げるのは卑怯なこと」という考えから抜け出すことをおすすめします。「逃げる」というのは自分を守るための武器なのです。
40代以降は「いかにうつ病から逃げるか」
40歳を過ぎた頃から気になってくるのが血圧や血糖値といった健康診断の数値です。また、その頃からは体重が増えたりウエストが太くなったりしてくるので、「メタボにならないようにしなくては……」とも気になってくるでしょう。
食事に気を使う人もいれば、スポーツジムに通う人もいるでしょう。カロリーの摂りすぎと運動不足から動脈硬化が起こり、これが糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞へとドミノ倒しのようにつながっていくと説明されますが、食事と運動は、要するに生活習慣病対策です。
この年代の人がそれ以上に対策が必要なのはうつ病です。
というのも、日本人の死因で、40代でがんに次いで多いのが自殺です(男性に限れば自殺が死因の第1位)。50代では、がんや心疾患・脳血管疾患が増えてくるものの、それでも自殺は死因の第3位です。
自殺者の5~8割はうつ病だといわれていることを考えると、40代以降はいかにうつ病から逃げるかが、健康や長寿をめざすうえでのポイントになります。