関西らしい「人と人との距離感」3つのポイント

さて、関西の働き手のほうが幸福感が高いということはどのような背景があるのでしょうか。調査分析チームでは、幸福感の背景として関西らしい「人と人との距離感」に着目し、3つの仮説を立てて分析をしています。

1つは「本音で話せているか」です。

既存の常識や世の中の空気や論調に対し、忖度そんたくなく、自由で解放された気持ちで向き合えているかというもの。激しい競争や成果主義を求められる環境下での重苦しさとは対照的に、自由闊達かったつに可能性を求めてチャレンジしたり、成果に意欲的な態度が現れると考えているようです。

2つ目が「共鳴できているか」です。つまり、自分の考えや感情を閉じることなく表出して、相手とかけあい、話を展開させているかどうかというものです。理知的に理解することにとどめることなく、相手の言葉に自分も呼応できているかを示しています。

ビジネスの環境で考えると、相手の話を受け入れる、あるいは、命令を受け入れるという感覚とは対照的に、素直に共感して、自分の反応を返して話を膨らませていく、展開させていく様子が目に浮かびます。

3点目が「共有できているか」です。心が動いた共鳴の感覚を第三者の他人にも積極的に拡散し、また逆に他の人から受け取ることがあるかというものです。

関西人には最近のおもしろい話を共有する、それをまた別の人に話していくというような話法があるように思っています。ビジネス上でも、自分が気づいたおもしろい視点をぶっちゃけながら表現豊かに語っていくことが会議上でも許されているように思います。

目的主義的になりすぎず、議題の余白をどんどん広げることを協力しながら楽しんでいるようにもみえます。

他の人となにげないことを楽しく話せる

さて、その3つのコミュニケーション話法をスコアで見ますと、確かにすべての項目で関西が関東を上回る結果となっています。

【図表】コミュニケーションの3つのスコア
出典=博報堂DYホールディングス「これからの幸福感プロジェクト」はたらく世代の幸福感調査(2022年8月)より

まず「本音項目」を見ると、自由に本音で話し合ったほうが楽しく思えたり、自分に本音で話してくれる友人がいる、肩書やしがらみに忖度しないといった項目で関西が目立って高くなっています。

また、「共鳴項目」についても、他の人の話をうまく拾って広げたり、その体験談を自分が話したり、逆に人から聞くといったところが指摘されています。また「シェア項目」についても、仲間と一緒に楽しむことが好きといった項目が関西では特に高くなっています。

関西人のコミュニケーションや対人関係の作り方がよくあらわれているのだと思います。関西人のイメージにあるお笑い芸人のようにおもしろいことをいっているのではなく、他の人となにげないことを楽しく話せる信頼関係がありそうです。さらに興味深いのは、この3つの特性をもっているのは関西の人のほうがやはり多いということです。

私はこれらの指標をみたときに、関西人の「おもしろがり体質」だなと感じました。どんな話題でも喜んでくれたり、話を展開したり、なにせとても反応がいい。アーティストのライブでも関西では反応がビビッドであると聞きます。

【図表3】本音と共鳴とシェアが重なっている人はどれくらいいるのか
出典=博報堂DYホールディングス「これからの幸福感プロジェクト」はたらく世代の幸福感調査(2022年8月)より