自尊心は必ずアウトプットのなかに表れている

仕事における自尊心とは、その人が特に大切に思っている価値観ですから、必ずアウトプットのどこかに表れてきます。データをもとに議論をするタイプなら、その人は自らの感覚よりユーザーのリアルを重視しているのかもしれません。資料の最初で案件の全体像に必ず触れる人は、細かい部分を曖昧にせず、俯瞰した視野で全体を整理しながら進めることが仕事の流儀なのかもしれません。チームワークのために一人ひとりのモチベーションを何より大切にしている人なら、普段のやりとりの端々にその優しさがにじみ出ているかもしれません。

同じ職場など、距離が近ければ質問してみるのも手です。急に聞かれる「あなたの自尊心はどこからきていますか」という質問ほど驚かれるものはありませんから、「あのプロジェクトで、重視したポイントは何だったのですか?」「最終段階でA案とB案があったと思いますが、決め手はどこでしたか?」といった形で具体的な事例を交えながら質問すると、相手も答えやすいでしょう。自尊心とはその人が大切にしているものですから、難しい仕事や悩ましい状況のときほど表れやすいはずです。ぜひ積極的に尋ねてみましょう。

人には「損失回避性」の心理作用がある

【原則③】「小さなハードル」を示す

友人が運動不足を気にしている。そんなとき、「毎日10km走ろう」とアドバイスしたら、相手はやる気を出して毎日走るようになるでしょうか。

トレッドミルで走る人
写真=iStock.com/paylessimages
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人には、手に入れることよりも損失を大きく感じてしまう「損失回避性」という心理作用があります。健康のためには運動を始めた方がよいに決まっていても、今までと異なる行動をすることで生活リズムが崩れるかもしれない。すぐ飽きてせっかくのジム代が無駄になるかもしれない。そんな自らに降りかかる損失を、得るものより大きく受けとめてしまうのです。

あなたが何かを伝え、相手の中に行動の選択肢を生み出し、共に一歩踏み出したいのなら、ハードルの高さは常にチェックすべきです。高すぎるハードルは、やる気を出させるどころか、行動自体にストップをかける巨大なブレーキになってしまうからです。

自動車の販売台数で4年連続世界一となっているトヨタも、「工具を誰でも整理整頓しておけるような配置の見直し」といった小さな改善の積み重ねによって、世界に誇るトヨタ生産方式(TPS)を今日に至るまで進化させ続けています。