「俺がこの難問を解いてやる」というインサイト

日本語に訳すと「自然対数の底eの中から連続する10桁の素数」。数学に疎い自分にはちんぷんかんぷんの表記です。

しかし、スーパーブレインズにとってこのメッセージはとてつもなく刺さるものでした。

彼らはどう反応すると思いますか?

そう、彼らは「この問題は俺が解く」と思うのです。メッセージの最後に.comという表記があるのでウェブサイトが存在することがわかります。彼らはこの超難問(なんだそうです)に挑戦したくなってこのウェブサイトを訪れるのです。

するとそこでもグーグルの表記はないまま、さらなる問題が提示され、正解を入力しつづけると、「あなたを採用します」というグーグルからのメッセージが表示されるのです。そう、これはグーグルの研究開発部門の採用試験そのものだったんですね。

グーグルはこのキャンペーンで優秀なエンジニアを採用したそうですが、ここで重要なことは、「正解を出してグーグルから採用通知をもらった人でさえ、自分に『難問を解きたい』という欲望があることを自覚的に意識していない」ということです。多くのスーパーブレインズが、自分の欲望に気づかないまま、せっせと問題を解いて採用通知をもらっていたのです。

それくらい、人間は自分の欲望について無自覚なのです。人間は自分の欲望を言語化して意識することができないのです。

しかし、クリスピンポーター・アンド・ボガスキーの企画者は、「彼らはきっと自分の能力をひけらかすために、難問を解くにちがいない」とスーパーブレインズのインサイトを発見していたのです。

巨大な黒板の前に小さな子供
写真=iStock.com/pinstock
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インサイトの見つけ方

人の欲望は、日々、新たに生まれています。

フェイスブックが登場すれば、いいね! をほしがる承認欲求が生まれ、インスタグラムが登場すれば、盛れてるセルフィーを撮りたいという欲求が生まれ、動画配信サービスで倍速再生機能が登場すれば、1.5倍速でタイパをよくしたいという欲求が生まれます。

でも、街ゆく人に「あなたが本当にほしいものはなんですか?」と尋ねても、人は自分の欲望を予め言語化できません。

では、どうやってそんな隠れた欲望「インサイト」を見つければいいのでしょうか?