個人が富めば国も富む「資産運用立国」

新NISAの新規口座開設者が、海外のインデックスファンドに投資していることについて、「日本から、どんどんお金が海外に流れてダメじゃないか」といった批判的な声もあります。ただ、これは明らかに間違っています。

2023年末のことです。岸田政権は「2000兆円の家計金融資産を開放し、持続的成長に貢献する資産運用立国を実現する」と表明しました。

政府が掲げるこの「資産運用立国」とは、日本の家計の金融資産の半分超を占める1100兆円の預貯金を投資にまわし、金融資産からも所得を得られることを目指すこと。

個人が成長によって富めば、国全体が富む。それを日本という国の本来のあり方とする表明です。

ゆえに個人が成長を求めて投資行為を始めるのは、その流れに適っている。多くの人たちが「S&P500」や「オルカン」を買っているということは合理的です。

しかし、ここに一つ、問題があります。それは株を買っている当事者が、実は自分が「何に投資しているのか」理解していないということです。

「オルカンの構成って何ですか?」と個人投資家に訊くと、「世界の株式です」というぐらいで、どういう国に配分されているのか即座に答えられる人は、ほとんどいないのではないでしょうか。実態は、時価総額が大きい、米国です。

分散させているつもりが偏っている実態

では、米国株式を代表する「S&P500は、どこに投資していますか?」

そう訊かれれば、「アメリカを代表する500社に投資しています」と答えられるでしょう。

しかし、前述の通り、「S&P500」の時価総額30%以上はマグニフィセント・セブンといわれる7社(アルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディア)が実際に占めていて、非常に偏っています(2024年7月時点)。

要するに、インデックスで分散させているつもりでも、実はかなり偏った投資をしているわけです。

また、インデックスファンドは、買付手数料無料(ノーロード)で、信託報酬(購入者負担の保有残高に加算される年率運用費)が安いのが特徴です。ただ、売り手からすると「つみたてNISA」というのは、販売手数料を稼げません。ゆえに、「みなさまが買っています」という安易な説明に陥りやすいのです。

よくインデックスは「ほったらかしにできるのがいい」なんて言われますが、ほったらかしにしていいのは、むしろ売り手のほう。買い手は何に投資しているのかよくわからないまま、ほったらかしにしておくのは考えものです。

もちろん日々、「今日の動きはどうだろう」と常に気を配るのは現実的ではありません。でも、自分が買っているインデックスファンドに含まれる会社のことに関心を持つのは当たり前ではないでしょうか。

データを見る人
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