パワハラを受けても「自分がいけないんだ」
高校生になり進路を決める時期、野村さんは大学進学を希望していた。しかし、母親は大学に行くことを猛反対してきた。学費の問題ではなく、おそらく母親が中卒だったため大学に行くという考え自体がなかったのではないかと野村さんは振り返る。それでも反対を押し切り野村さんは大学へ進学した。
「大学に進学するにあたって一人暮らしを始めました。一人暮らしはものすごい解放感でした。でも、大学に入ってすぐにうつ病になってしまったんです。なんだか、実家だと病んでいる暇もなかったのが、突然自由になって緊張感がなくなってしまったんだと思います」
うつ病を抱えながらも大学を卒業した野村さんは、新卒で介護の仕事に就いた。そこでパワハラを受けたのだが、それをパワハラと気づけなかったという。
「上司から『辞めてしまえ』などと言われていました。結局その職場は辞めて転職したのですが、あるとき、知人に前の職場でこんなことを言われたと言うと、『それはパワハラだよ!』と言われたんです。そこでやっと、これってパワハラで人に相談していいことだったんだと気づきました。どうしても自分がいけないのだと思い込んでしまうんです」
一度だけ、母に怒鳴りつけてスッキリした
うつ病の影響もあり職を転々としていた野村さん。ついに耐えきれなくなったある日、母親に長文で「もう親子の縁を切りたい」といった内容のメールをしてオーバードーズをしてしまう。一日だけ入院して命に別状はなかったものの、両親からもう一人暮らしをさせておけないと言われてしまった。
しかし、彼女は実家に戻るのも嫌だったため、一旦叔母の家に居候させてもらうことにした。しかし、叔母の家ではオーバードーズの影響からか躁状態になってうまくいかず、結局実家に戻ることになった。
「実家に戻ってから一度だけものすごい剣幕で母親を怒鳴りつけたことがあるんです。『お母さんって昔こういうことを私に言ったよね』と。そしたら母親は泣き出して、『そんなの昔のことじゃん』と言うので『昔のことだからってすまされないんだよ!』と返しました。泣いている母親を見たらすごく開けた気分になりました」