あなたは岸田首相の「べらんめえ口調」を知っているか
「官邸と検察は健全な関係じゃないといけねぇんだ。権力は国民のために使わないといけねぇんだ」
「何をどうしたって今は批判されるんだろうなぁ。でも、中途半端に投げ出すわけにはいかねぇんだよ」
この発言、誰のものかお分かりだろうか。何を隠そう、岸田文雄首相その人である。発言は共同通信系47ニュース報道(2024年7月17日付)からの引用で、記事によれば岸田首相の〈丁寧な言葉遣いがべらんめえ調になるのは感情がこもっているとき〉だという。
広島弁じゃないのかと驚いたが、こうした岸田首相のキャラクターは、どの程度、国民に知られていたのだろうか。3年の在任期間は戦後歴代8位で、決して短くない。にもかかわらず、岸田首相のべらんめえな側面は国民にほとんど知られることなく、1期の任期満了をもって総理の座を退くこととなった。
総裁選不出馬は支持率低迷が響いたためで、退任が決まってからの新聞報道の総括記事には「総理として何をしたいのかわからなかった」「やりたいことがなかったのでは」などの文言が踊っていた。
「日本外交にはもう一人の岸田が必要だ」
だが一方で、岸田政権は一部では非常に高い評価を得てもいる。外交・安全保障関係者によるものだ。
2022年2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻や、同年に日本が主催国となったG7広島サミット、同年末の「防衛三文書」の改訂、2023年10月からのイスラエルとハマスの衝突に端を発する紛争など、激動の3年間における岸田政権の外交・安全保障における舵取りは、評価されてしかるべきとする声も少なくない。
例えば退任公表後、慶応大学教授で国際政治学者の細谷雄一氏は〈岸田文雄政権とその時代〉と題する論考を読売新聞に寄稿している(2024年8月21日)。
細谷氏は〈困難が溢れる「世界史の転換点」の中で、岸田政権が適切にそれを理解し、対応した意義は大きい〉として、軍事侵攻したロシアを即座に強く非難し、ウクライナ支援を継続した〈岸田首相の外交における指導力を高く評価すべきである〉とする。
また『ニューズウィーク』(2024年8月27日号)にも、南カリフォルニア大学東アジアセンターのユカリ・イーストン氏が〈日本外交にはもう一人の岸田が必要だ〉との記事を寄せた。