「サラダ」はマヨネーズ業界の戦略だった

こう見ると、昨今の魚の“何でも生食”は「生で食べるほうがうまいはず」と、「生で売るほうが付加価値も価格もアップ」という2つのメリットで強化された海産物ビジネスといえます。文化というよりも、メディアによって刷り込まれたものでしょう。

この生で食べるという刷り込みは、海産物から、肉(牛サシや鳥サシ、O157で禁止になりましたが、牛の生レバーなど)に広がり、野菜へも広がっていますよね。生で食べれば何でもおいしいという刷り込みで、生で食べられるものを探し回るわけです。

最近はトウモロコシも生で食べるくらい、日本人は野菜をどんどん生で食べますが、それは昔からではないです。昔は、漬物が主です。ゆえに野菜も生食を前提には栽培していなかったと思います。野菜の栽培環境からして、衛生的な生食に適していたかも疑問です。

そもそも野菜は生では口にしないものでした。戦後、食の洋風化とキユーピーの戦略で、アメリカから輸入された「サラダ」を食べるようになるわけです。これが、最近は加速化しています。パプリカやズッキーニのはやりも、この流れでしょう。

サラダを混ぜる女性
写真=iStock.com/Thai Liang Lim
※写真はイメージです

韓国のキムチのほうが長く受け継がれている

イタリアやフランスと違ってトマトもほぼ生食用です。京都出自のミズナはそもそも、漬けるか鍋(ハリハリ鍋)で食べたので一束はかなり大きかったのです。それが最近はサラダで食べるようになったので、品種改良で一束がとても小さくなっています。

一説によると、いま売られている小ぶりのミズナはアメリカ市場向けにサラダ用に小ぶりに開発されたものが逆輸入されたものらしいです。

タキイ種苗が1993年に「サラダ用みずな」という商品名で売り出しています。現在は「シャキシャキサラダ水菜」として販売されていますが、白い柄の部分が短く、その割りに葉は青々としており、まさにサラダに適した状態のものといえます。

食の伝統という点では、韓国のキムチと日本の漬物のどちらに軍配が上がるかは明白です。減りつつあるとはいえ、韓国では依然として家庭でキムチをつくるようです。

一方、糠床ぬかどこがあったり、自宅で漬物を漬けたりする家庭は日本にどのくらいあるでしょうか。