「日本人は生でものを食べる」イメージの起源

現在は、日常的に何でも生で食べようとするので「生食は日本の食文化」といえなくもないでしょう。問題は「なぜ日本人が何でも生食しようとするようになったか」です。

話は1970年代末に、ロサンゼルスとニューヨークで始まった「スシブーム」にまでさかのぼります。

小笠原泰『日本人3.0 新しい時代のルールと必須知識』(ワニブックス【PLUS】新書)
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このブームはアメリカから欧州、そして世界に広がり、日本人は生でものを食べるという強いイメージが生まれます。

このイメージが逆輸入され、外国人に「日本人は何でも生で食べるんですよね」と言われ、「日本人は何でも生で食べるものなんだ。だって生はおいしいから」と日本人自身が思うようになったのではないでしょうか。これもある種の外圧ですね。つまり外国人にいわれるとすぐにその気になってしまうのです。

つまり「何でも生食する日本人」という日本の生食の文化は、「作られたもの」ともいえます。実際、初詣もそうですが、伝統は創られますからね。

日本人は新奇性を好む生き物である

この「生食」という刷り込みも文化ともいえなくはないですが、胸を張って日本の食の伝統といえるかは疑問でしょう。

ここまでを総括すると「日本人は保守的で伝統を重んじる」という一般論は、実は真逆ではないかということです。日本人はむしろ新奇性を好む生き物で、伝統という“後方”ではなく、新しいもの探しのアンテナの感度を上げて“前方”を向いている気がします。

要は、公権力の教育を通して日本人は「保守的で伝統を尊ぶ」と刷り込まれているだけで、内実は違うのではないでしょうか。ナショナリズムを必要とする公権力としては当然の政策ではありますが、個人はそれに気づくべきでしょう。

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