修繕積立金が当初の3.3倍に増えたマンションも
では、実際にどれくらい増えるのだろうか。それは、マンションの構造や規模などによっても異なってくるので、一概に決めつけることはできないが、経過年数の長い築古マンションでは、大規模修繕に必要な費用が増大してくるので、5年で1.5倍、10年で2.0倍に増えることもないとはいえない。
先のマンション総合調査から、当初の修繕積立金の金額と、増額を経た後の直近の修繕積立金の金額を比較すると図表2のようになっている。増額後の積立金額が最も大きいのは1985年~1989年竣工の築35年から39年が経過したマンションで、当初の1m2当たりの積立金額が88.5円だったのが、最終的には288.4円に増えている。70m2当たりに換算すると、6195円だったのが、2万0188円に増えているわけで、当初に比べると3.3倍なっている計算だ。
4割の管理組合で修繕積立金が予算不足
しかし、それだけ増やしても、長期修繕計画の実施に必要な金額に足りないとするマンションが少なくない。
「現在の修繕積立金残高が計画に比べて余剰がある」とするマンション管理組合は38.9%で、計画の実行には足りないとする管理組合が多い。「計画に対して20%超の不足」が11.7%で、「計画に対して10%超~20%の不足」が3.7%、「計画に対して5%超~10%の不足」が2.9%、「計画に対して5%以下の不足」が18.3%だった。合計すると36.6%のマンション管理組合で予算が足りないという結果だった。
それでも、大規模修繕を怠るわけにはいかないので、資金不足を補うためには、修繕積立金の増額、一時金の徴収、または金融機関からの借入れなどの方式が考えられるが、いずれにしても、最終的には所有者全員の負担で計画を実行していかなければならない。
なかでも、修繕積立金の増額が最も堅実で確実な方法だが、これが決して簡単なことではない。特に、新築後の経過年数が長くなってくると、建物の老朽化で必要な修繕費用がふくらんでくる半面、所有者の高齢化で、積立金の増額が簡単ではなくなってくる。