一般職から総合職転換し課長に

村木さんへの継続インタビューは2007年、商品企画部の課長ポストに就いて数カ月が過ぎた頃からスタートした。当時44歳で、勤務する会社では、課長昇進年齢の平均からすると少し遅くはあったものの、一般職で入社して転換試験を受けて総合職になった女性の課長就任はまだ数少なかった。

多種多様な商品を取り扱い、各所に華やかなディスプレイが施された店内とは対照的に、部屋の壁面に沿って商品の入った段ボール箱が所狭しと積まれた会議室に入ると、村木さんが「雑然としていて、店との落差に驚かれたでしょう」と、弾けんばかりの笑顔で迎えてくれたのを鮮明に記憶している。

「男女雇用機会均等法が施行された年に入社しましたが、厳密に言うと私は、『均等法第一世代』とは違うんです。入社時は一般職だったものですから……」

そう言って、少しおどけた表情を見せた。

「新たな時代のキャリアウーマンを象徴する総合職は、どんくさくて要領の悪い自分には向いていないと思い、一般職を選んだんです。それに、学生時代は総合職だと婚機を逃すと考えていたので……実際に逃して、今なお独身ですけどね。あっ、はは……」

地道な努力でキャリアを築く

関西出身で、大学では落語研究会に所属していたせいなのか、取材者が慎重になるような結婚などプライベートな話題も明るく笑い飛ばす。一瞬にして場の雰囲気を照らすような彼女の話し方や表情に助けられた気がした。

「均等法というチャンスをもらったにもかかわらず、なんで4年制大卒で総合職でなく一般職なんだ? という世間の偏見が気になった時もありました。一般職なら、寿退社まで少しでも長く勤めてくれる短大卒を企業が好む時代でしたから。入社後7年間、経理事務の仕事には誇りを持って取り組みました。でも……徐々にもっと自分の能力を発揮してみたい、いずれは指導的地位に就いてみたいと思うようになって、30歳を目前に、上司の勧めもあって総合職への転換試験を受けたんです。総合職入社の人たちと比べるとハンデはありますが……一生懸命に頑張って、やっと課長に昇進させてもらったんです。もう、元来の性格のぼーっとしているところは葬り去って……う、ふふ……前進あるのみですね」

一般職から総合職、さらには課長昇進と、それぞれの節目で周囲からの重圧も感じたことだろう。持ち前の明るさと地道な努力で、キャリアを築いてきたことがわかる。

抽象的な階段の間を歩く実業家
写真=iStock.com/gremlin
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