注意の集中を担う脳のネットワーク
顕著性ネットワークのなかに、注意の集中という役割を担っているもっとも重要な部分がある。それは「注意ネットワーク」(AN)と呼ばれ、「腹側注意ネットワーク(VAN)」と「背側注意ネットワーク(DAN)」という2つの部分を含む。
基本的に、これらのネットワークの仕事は、どのように注意を払うかを決めること、そして目の前のタスクから注意をそらすのを許可するかどうかを決めることだ。
背側注意ネットワークは別名「タスク・ポジティブ・ネットワーク」とも呼ばれ、これは「認知タスクを遂行中に活動するネットワーク」という意味だ。このネットワークで何かに注意を向けるときは、自発的、かつトップダウンで行われる。
もう一方の腹側注意ネットワークのなかでは、頭頂間溝と前頭眼野と呼ばれる部位が、視覚を司る脳の部位に影響を与えている。これらの影響を与える要素によって注意の方向性が決められているのだ。腹側注意ネットワークに含まれる主な部位は、側頭頭頂接合部と、右脳の腹側前頭皮質だ。これらの部位は、行動するうえで重要な刺激が予想外に発生すると反応する。
腹側注意ネットワークは、何かに意識を集中させ、トップダウンの処理が行われている間は発動しないようになっている。たとえば、視覚を使って何かを探しているようなときだ。
このおかげで、目標に向かって注意力を発揮しているときに、関係ない刺激によって注意が阻害されるのを避けることができる。探しているものが見つかるか、あるいは探しているものと関連のある情報が見つかれば、腹側注意ネットワークは再び活動の状態になる。
脳の中にいるCEO
脳の作業記憶とは、必要な情報を一時的に保存しておくスペースのことだ。セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(CEN)は、この作業記憶に保存されている情報を維持・操作する役割を担い、それに加えて、目標に向かう行動を遂行するときの意思決定や問題解決にも責任がある。
これはたとえるなら会社のCEOのような存在だ。会社ではCEOが命令を出し、組織全体が向かう方向を決めている。デフォルトモード・ネットワークは覚醒した休息のときに活性化するが、一方でセントラル・エグゼクティブ・ネットワークは認知的にも感情的にも難しい活動を行っているときに活性化する。
CENの主な部位は、背外側前頭前野と、後外側頭頂野だ。背外側前頭前野は作業記憶のなかにある情報を操作し、その反応としてどんな行動が可能かを吟味する。後外側頭頂野は五感からの情報と体内の知覚を統合し、注意に持続性をもたせている。CENの機能低下は、抑うつや、そのほかさまざまな認知障害と関連があるとされている。
CENは、わたしたちが賢明で適切な決断を下すのを助けてくれる。それだけでなく、感情を制御するために必要なトップダウンの処理にも、CENの助けが必要だ。
正常に機能しているCENは、冷静で、地に足の着いた大人に似ている。癇癪を起こしている子どもに冷静に語りかけ、神経を落ち着かせることができる。意図を潜在意識に埋め込みたいなら、心理的・感情的に安定した状態になることが不可欠だ。