幸せな人生を送るためにはどうしたらいいのか。スタンフォード大学脳神経外科部臨床教授のジェームズ・ドゥティさんは「自分に向かって習慣的にネガティブな言葉を投げかけることはやめたほうがいい。なりたい自分をイメージして、脳が必要な情報を受け取れるようにすることが大切だ」という――。
※本稿は、ジェームズ・ドゥティ『スタンフォードの脳神経科学者が証明!科学がつきとめた「引き寄せの法則」』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
孤独を感じるのは「ぼんやり」しているとき
脳内のネットワークのなかで、もっとも詳しく研究されているのがデフォルトモード・ネットワーク(DMN)だ。解剖学的には内側前頭頭頂ネットワーク(M-FPN)とも呼ばれていて、内側前頭前皮質と、それに隣接する前帯状皮質、後帯状皮質、楔前部、角回で構成されている。
基本的にDMNとは、人が内側に向かって集中しているときの脳の活動のことだ。目覚めた状態で休息している、ぼんやりと考えごとをする、思い出にふけるときの脳が、このDMNの状態になっている。
DMNで可能になるのが、「自己参照のプロセス」、つまり自分自身をふり返ることだ。
ある意味で、これは「自分についての物語」を紡ぐことだとも言えるだろう。長期記憶のなかに保存されている過去の記憶を掘り起こし、自伝のなかに統合していく。そうすることで、それぞれの記憶について一人称の語りが可能になる。
DMNの脳は、精神のタイムトラベルを経験している。過去の出来事を思い出し、そして将来に起こるかもしれない出来事を予想する。それに加えて、他者についてどう考えるかということもDMNの役割だ。他者が何を考えているのかを考え、他者の感情を理解して共感し、ある態度や行動が正しいかどうかを判断し、さらには社会的な交流がないときに孤独を感じることにもDMNがかかわっている。
日常生活でDMNの活動が意識できるのは、たいてい何か具体的なタスクに従事せず、心のなかで絶え間ないおしゃべりが続いているときだ。