言うことを聞くのは、その場から逃避したいだけ
叱られた子どもは多くの場合、強いネガティブ感情を抱いて防御システムが活性化されます。もう少し厳密に言えば、「叱る」という行為はそのことを狙った関わりなのです。
もし、相手のネガティブ感情を引き起こしたくないなら、そもそも「言い聞かせる」「説明する」などの行為で十分なはずです。それではうまくいかないと感じるからこそ、強い言葉や態度で叱責するのです。
つまり「叱る」という行為の本質は、叱られる人のネガティブ感情による反応を利用することで、相手を思い通りにコントロールしようとする行為なのです。
叱られた子どもの防御システムが活性化されると、戦うか逃げるか、どちらかの行動が起こります。叱る人は権力者なので、逃げることが多くなるでしょう。戦ったところで、勝てないからです。
ただし、逃げるといっても人間は高度に社会化された生き物ですので、物理的に走って逃げるわけではありません。そんなことをしても、さらに叱られてしまうだけです。そのため子どもたちはその場を取り繕うために、「言うことを聞く」「謝罪の言葉を述べる」などの方法で逃げます。そしてこのことが、叱る側に「叱ることは有効である」という勘違いを引き起こすのです。
自分が強く叱責することで、目の前の人の行動が変わる。それが単なる逃避行動でしかないことを知らなければ、「叱れば人は学ぶ」と勘違いしても無理のないことでしょう。しかしながらそのとき、叱られた人の前頭前野は活動が低下しています。自分がなぜ叱られているのかを冷静に理解し、今後のために自らの行動を省みることができない状況です。
そのため、子どもたちはまた同じことを繰り返します。学んでいないのだから、当たり前です。そしてまた、叱られることが繰り返されていくのです。