「ダーク」から「リアル」へ配送拠点をシフト

クイックコマースの速達性は、主にこのダーク・ストアによって支えられてきた。Eコマースのような大規模物流センターからではなく、住宅街などに高い密度で展開されたダーク・ストアから配達することで、Eコマースよりもはるかに優れた即応性を実現してきたのである。ダーク・ストアからの配送地域であれば、早い場合には注文から10分程度で品物を手に入れることができる。クイックコマースにとってダーク・ストアは事業の要であり、最大の武器でもあった。

買い物かごいっぱいの食料品
写真=iStock.com/MarkSwallow
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OniGOも当初は、このダーク・ストア方式でサービスを展開してきた。だがここ1年ほどの間に、イトーヨーカドーのような小売店舗から商品を届ける方式へと、事業の重点を移している。一方で、フードデリバリー大手のウーバーイーツジャパンや出前館も、クイックコマースへの参入においてはOniGOと提携している。ウーバーだけではない。イトーヨーカドーも店舗から先の配送については、OniGOとの連携を広げようとしている。これは、なぜなのか。

イトーヨーカドーはすでに自前のネットスーパーを構築している。ならば、それを活用すればよいではないか。あるいはウーバーについても、そうだ。OniGOなどと組むことなく、直接イトーヨーカドーから商品を運べばよいではないか。イトーヨーカドーやウーバーは、OniGOにどのような価値を認めたのか。以下、ONIGO代表の梅下直也氏への取材をもとに、その理由を考察する。

在宅ワーク時代の生活様式にフィット

Eコマースやネットスーパーと、クイックコマースとの違いは、やはりその速達性にある。注文してから配達まで、一般的なEコマースなら1~2日はかかる。当日配送に対応するネットスーパーであっても、受付時間には締め切りがあり、配達希望時間の遅くとも数時間以上前には注文を完了しなくてはならない。

たとえばある朝、保育園児の子供が急に熱を出した、あるいは同居している高齢の親の様子がおかしいということで、会社に連絡し、急遽在宅ワークに切り替えたとする。そんなとき、会社帰りに駅前のスーパーで購入しようと思っていた夕食用の食材を、Eコマースで入手することは難しい。自宅のある地域で当日配送を行ってくれるネットスーパーがあっても、受付の締め切り時間までに注文操作ができないような状況も起こりうるだろう。