都市部やその郊外の居住者であれば、その日最低限必要な食材などを購入するには、コンビニの利用も考えられる。しかし今日は、子供や老親の近くにいたい。15~20分ほどの短い時間であっても、コンビニに行くために家を空けるのは避けたい。もっとよい選択肢はないか……。

クイックコマースの典型的な出番は、このような場面である。

赤ちゃんを抱っこしながらノートパソコンで作業する女性
写真=iStock.com/AnnaStills
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撤退ラッシュの中で戦略を大転換

一方でクイックコマースは、規模がものをいうビジネスである。受注からピッキング、配送に至る流れをスムーズに導く受注システムへの投資に加え、住宅地に高い密度でダーク・ストアなどの配送拠点を増やし続けながら、規模をめぐる競争を乗り切っていかなければならない。しかし、コロナ禍が収束に向かい、金利が上昇しはじめると、従前のような条件で資金調達を続けることは難しくなっていく。

コロナ禍の「巣ごもり需要」のなかで生まれた世界的トレンドに沿って、OniGOが創業した2021年前後は、日本において国内外の事業者によるクイックコマースへの新規参入が相次いだ。だが、上記のような環境変化を受け、2022年から2023年にかけては、世界的大手デリバリーヒーロー傘下のpandamart(パンダマート)、韓国大手のCoupang(クーパン)をはじめ、日本国内においてクイックコマースの撤退ラッシュが起こる。中には参入から1年を待たずに撤退した事業者もあった。

そのなかにあってOniGOは、クイックコマースの即配を支えてきたダーク・ストアの拡大戦略を見直す。代わりに、23年8月にはいなげや、23年11月にはアオキスーパー(名古屋市)、そして2024年の1月にはイトーヨーカドーと、相次いで「リアル事業者」といえる既存スーパーとの提携を開始。さらに一見競合にも見えるデリバリーサービスのUber Eats(ウーバーイーツ)とも連携しながら、配送エリアの拡充を進めている。