生産性を上げて確保した時間に仕事をするスパイラル

でも、スローンは休むために働くのではない。仕事のために働きます。優秀な人だからこそ、仕事に時間を注いだ分だけ、普通の人たちでは夢にも描けないような成果を手に入れます(いけないと思いながらも観れば観るほどかっこいいと思ってしまう理由です)。

人生で一度ぐらいはスローンみたいに生きてみてもいいんじゃないか? でも、その「スローンみたいに」から「仕事」をとったら残るものは何もありません。

ワーカーホリックの男性たちを描いた映画でよくあるように、仕事には長けているが、人生(または愛)には不器用な人たちの典型です。生産性は永遠に引き上げなければならない何かになってしまう。生産性を引き上げる理由は、新しく確保した時間に仕事をするため。だから終わりがないのです。

では、スローンはいつ休んでいるのか? 牢獄に入ってやっと休めるのです。そこではスマホも覚せい剤もなく、彼女が出席しなければならないパーティーもない。強制的に仕事ができない状況にさせられて初めて、彼女は生産性という呪文から解き放たれます。

映画ではかっこいいエンディングかもしれませんが、現実のあなたには、もっと持続可能なやり方で仕事をしてほしいのです。生産性がつくりだしてくれた時間は余暇に、あなたにとって大切な人間関係に使いましょう。仕事ができなくなったときに、退屈だったり寂しくなったりしないように。

休日の過ごし方すら「使える」が基準になってしまう

余暇の過ごし方についても、生産性が大切だと信じている人がたくさんいます。週末に遊びに行く場所でどうやったら新たなインスピレーションを得られるか、読書からいかに学びを得るかというこまごましたプラン、さまざまな生産性のためのツールを使ったチェックアップが一般的になっています。インスタグラムやツイッター〔現X〕に余暇を記録する行為は、個人のブランディングの延長として受け止められます。

友人Aは小説を読む必要がなくなってからは(つまり学校を出た後は)一編も読んでいないそうです。時間の無駄だと。週末にカフェに行くときも新しい場所に行かなければ気がすみません。すでに行ったことのある場所にまた訪れるのは時間がもったいないからと。

新しい経験をするとき、「この経験が自分にどんな意味をもたらすか」を考えながら経験をスタートさせるわけです。ダイアリーをデコる人は、ダイアリーにどうやって記録するか悩み、映像や写真メインで活動する人は、そのワンカットワンカットを考える。

私はそうじゃないという秘訣をシェアしたいところですが、私も同じです。ただ「これをどうやったら使えるか」と考えないように努力しているだけ。