海外渡航の直前まで徹夜で働いていた
超凄腕のスローンは、仕事に人生を捧げます。問題は私がこの映画を観ていて、そんなスローンに多少なりとも魅せられたという点です。私は休息のスケジュールをまず先に確保しておく、それこそ遊ぶために働く人ではあるものの、体力が許す限り、最大限がんばって働くことにも慣れています。
30代半ばまでは、海外に向かう飛行機に乗る直前まで徹夜しない日のほうが少なかった気がします。「機内で寝ればいい」。これが私のモットーでした。時間はいつも足りず、もったいなくて仕方のない資源でした。遊ぶのは好きですが、それと同じくらい仕事も重要でした。ある日、大学病院の眼科で検査を受けた帰りに、すぐに集中治療室に行くようにと言われる前までは、すべてがそんなふうに流れていたのです。
(説明するとなると長くて奇妙な経緯で)集中治療室に自分から歩いて入っていった患者とはいえ、退院してみると、お箸一つ持つのにも難儀しました。集中治療室、重患者室、一般病棟を経たとはいえ、私の体感では入院前の私はぴんしゃんしていたのに、ベッドに寝かされたまま集中治療室から重患者室に移動するときも休む間もなく電話をかけていました。
会社に状況を知らせなければならなかったし、翌日の約束はキャンセルしなくてはならなかったし、週末にも予定が入っていました。しばらくの間電話をかけまくってから、ベッドを押してくれている看護師に聞きました。
「重患者室では携帯を使えますか?」
看護師の返事は簡単です。
「そこまで元気な方はいらっしゃらないので……私もこういったケースは初めてで」
外からは元気そうに見えても、いつ何が起きてもおかしくないという診断でした。
緊急入院を経てスケジュールの立て方を変えた
その入院以来、定期的に通院していますが(主治医の名前がよりによって私の嫌いな野球チームの主戦メンバーと同じ)、休息を最優先に、運動をその次に、仕事を最後に考えるようになりました。
それ以降、私にとって生産性とは映画の中のスローンとはまったく異なる性質のものになったのです。私の目標はいつもはっきりしています。私が生産性を高める理由は、すぐに仕事を終えて横になるためです。すっきりと軽やかな気持ちで横になるため。
秀でた実力を身につけることは諦めたとはいえ、急かされているような気分にならずに座って仕事をするには、運動は欠かせません。それに運動はちょっとおもしろいところもあります。運動の強度も簡単には上げず、定期的に運動することを目標にして、気分が落ち込みやすい冬場の数カ月は、できるなら仕事はしないようにしています。積極的に。