なぜ男性は美人局に騙されるのか。鮫島千尋弁護士は「美人局はマッチングアプリや結婚相談所など一見安全そうな出合いの場にもいる。そして男性が『性犯罪の被疑者』というレッテルを貼られたら、社会的に大打撃を受けるという不安を利用してくる」という――。
初めてのお泊りでキス
弁護士に依頼がくる美人局被害の相談内容はさまざまですが、今回は高収入の男性向けに美人局の被害にあった人のケースを紹介します。
本記事はプライバシーを考慮して、傍聴した裁判、見聞きした文献や裁判例、過去携わったさまざまな事件などをもとに、事実を一部変更してお届けしております。あらかじめご了承ください。
依頼者は50代で女性慣れしていなさそうな技術職の男性。「女性から『不同意わいせつの被害を受けた』と言われて困っている」と電話をかけてきたのです。
相手は小柄な20代女性。2人はマッチングアプリで知り合い、3カ月ほどかけて、食事やデートを重ねていました。正式に付き合うという話はまだしておらず、男性は奥手なこともあり、性交渉は一度もなかったといいます。ある日、女性に「家に行きたい」と言われ、男性は、女性に好意をいだいていたため快諾しました。そこで、流れでキスをし、翌日も笑顔で別れたそうです。ただ、二人の間には性交渉はありませんでした。
その後男性は仕事が忙しくなり、数日ほど自分からの連絡をしませんでした。すると、女性の方から連絡が来て「お泊りのときに望んでいないのにキスをされたことは犯罪行為だから警察に被害届を出そうと思っています。でも、おおごとにしたくないし早く解決したいからお金を払ってくれたら示談にします。今週土曜日のお昼に、指定するカフェまで来てください」と唐突に告げられたのだそうです。