口頭で聞かれた質問にチャットで返答する

事例をもう1つ紹介します。ある企業では社長と役員が、社員からの質問にチャットで返答する取り組みを実施しました。

口頭での質問やメールでの問い合わせに、関係者全員が閲覧できるチャット上で返答する。相手に「チャットで返答します」と伝えた上で、チャットツールに回答を書き込むのです。

社員はまた次の日には口頭で聞いてきます。それでもしつこくチャットで返す。

その会社では、社長と役員が取り組みを継続した結果、チャット利用者の割合が2〜3割から8〜9割に増えたそうです。

利用者の割合が増えると、様子を見ていた人もチャットツールを使うようになります。

別のある大企業では人事担当者が各部署のチャット利用率を会議でしつこく報告し続けています。「この部署では活用が進んでいます」「この部署は遅い」と数値を見せて公表した。そうすると、隣を見て危機感を抱くチームも出てきたそうです。

外部から講師を招いて、社内で学習会を開くのもよいと思います。チャットを使ったコミュニケーションの重要性、具体的な使い方や進め方、他社の事例などを専門家に語ってもらう。それによってチャットを活用したオープンなコミュニケーション風土の醸成を図っていきます。

コミュニケーションが雑になる

チャットの活用を進めている職場において、利用が広がってきたときに起こりやすい、第二の課題も少し紹介しておきます。

報告や連絡、相談のハードルが下がると、コミュニケーションが雑になって、場が荒れる場合があります。

例えばチームのメンバーが突然、話の流れとはまったく関係のない内容を思いつきで提案してくる。「その意見にも一理あるけど、いまこの流れで言う?」と聞きたくなるような発言が、フラットに飛び出すようになったりもするのです。

陸上競技トラックのハードル
写真=iStock.com/EvrenKalinbacak
報告や連絡、相談のハードルが下がると、コミュニケーションが雑になって、場が荒れる(※写真はイメージです)