買い物の動機が知らぬ間にすり替えられる

【100円ショップの罠②】「安いからついでに買っておこう」の心の囁き

節約好きの人ほど安さに弱い。「お買い得」より「半額」より、ダイレクトに響くのが「100円」という数字で、どう考えても安い。これが100円で買えますと聞くと、その商品が欲しいか欲しくないかよりも「これが100円なら買っておこう」という思考に傾く。必要だからではなく、「安いから」が購入の動機にすり替わっている。

そもそも100円ショップとは、ついで買いと衝動買いで成り立つ薄利多売のビジネスモデルだ。100円の商品が一つ売れても利益は知れている。

全てを均一価格にすることで利益利率が低いものと高いものとを混在させ、それをごちゃまぜに買ってもらうからこそ利益のつじつまが合うのだ。あれこれ買ってもらうために最も大事なのが、「安さの演出」というわけだ。

目的の品物を買うために出かけたはずが、店内を眺めるうちに「こんなものまで100円なのか」「これがあったら便利かも、100円だし」「せっかく来たし、100円ならついでに買っておこう」と、予定外のものをどんどんカゴに入れてしまう。

たとえ失敗しても、ダブって買ってしまっても、「100円ならいいか」が、そういう人の口癖だ。多分、家の引き出しには100均のハサミやらドライバーやら電子レンジ調理ができる便利グッズやらがぎっしり詰まっているだろう。

もし、以前買ったものをどこにしまったかわからなくなったとしても、また買えばいいのだ、100円だし。これが5000円や1万円なら慎重になるが、100円の商品なら、たとえ無くしても失敗しても、ダブって買っても痛みを感じない。1円も無駄にしたくないと思うのが、真の節約家のはずなのだが――。

1回あたりの購入数は「3個以上」の人が7割

【100円ショップの罠③】「ドケチな人に思われたくない」の虚栄心

いや、自分は衝動買いなどしないという強い意志の持ち主でも、100円ショップで商品を一個だけ持ってレジに向かうのには勇気がいる。

たった1つだけを買うは気恥ずかしいと感じてしまう。節約のため、安く済ませるためにわざわざ来たのに、たった100円分しか買わないドケチな人と思われるのは誰だってイヤなものだからだ。

つい周囲に見栄を張って、せめてもう一個くらい、他に買うものはないかと探し始め、気づくと3個4個……と余計なものを買っている。

マイボイスコムが2023年に調査した「100円ショップの利用に関するアンケート」では、1回あたり「3個以上」購入する人が全体の7割、「4個以上」でも全体の4割強を占める。やはり、たった1個だけで済ませる人はなかなかいない(上記調査では全体の7.3%)。

ショッピングモールでたくさんのカラフルな買い物袋を持つ女性
写真=iStock.com/imtmphoto
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