お金は節約したい、でも100円しか使わないケチな人には見られたくない――そのいじらしい庶民の心理をうまく突くのが100円ショップの巧妙なところだ。100円のもの1つ買いに来たはずが、気づくとレジで1000円以上も支払っていた――という覚えがある人は、まんまとその罠にはまっているにちがいない。

500g入りの薄力粉は、300gに減り、棚から消えた…

【100円ショップの罠④】「最安のはず」という錯覚、思い込み

いくら安いと言っても、100円ショップの商品が市中で最安価格とは限らない。ドラッグストアで買った方が安い洗剤もあるし、ペットボトル飲料は流通のPBなら100円以下でも見つかる。

さらに言うなら、100円ショップには半額セールも見切り品処分もない(店舗によってはたまにあるが)。しかも、客寄せ商品である食品は、ここ数年ステルス値上げがはなはだしい。

昨今では200円以上の商品が並ぶのは当たり前になったが、食品だけは100円を維持しているため、内容量を減らすしかないアイテムも多いのだ。

2022年頃、ウクライナ情勢などを受け小麦粉の価格が高騰したことがある。その際に100円ショップでの価格を調べたところ、2022年3月には一袋500g入りだった薄力粉が、8月には300gにまで減っていた。2024年の現在では、同じブランドの薄力粉を店頭で見つけることができなかった。儲からないものは店頭から消えていく運命だ。

本当に庶民の味方なのか

文房具類にもそれを感じる。A4書類を整理するため、毎年同じクリアポケット付きファイルを買っているのだが、ポケットの数があきらかに減った。また不祝儀袋を買ったところ、お金を入れる中封筒がついておらず、そこまでコストカットするかと驚いたこともあった。

仕方がない、それも100円ショップの宿命だ。売値を固定する以上、いかに原価コストを削るかが命題となる。だが製造を海外に頼ってきた商品も多く、昨今の円安、原材料費やエネルギー価格の高騰、人件費の負担などでコストは膨らむ一方。

朝の東京駅から通勤する人々のシルエット
写真=iStock.com/Free art director
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かつては現金商売で利益を出してきた面もあったが、コロナ以降はキャッシュレス決済へも対応せざるを得ず、事業者への決済手数料もじわり利益を削ることになる。となると、今後も売れ筋商品の絞り込みや、ステルス値上げに向かうのはやむを得ないだろう。

100円ショップに置かれた商品が、本当に他の店で買うより安くてお買い得なのか、それともただのイメージだけなのか。賢い消費者ならそこを見極めることが必要になる。